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妻を他人に
【熟女/人妻 官能小説】

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Wという男-4

「Wさんに目をつけられたのが彼女の運の尽きですな。どうします? もう少し追います?」
「もう十分だ」
「残念だなあ、楽しかったのに。ま、美魔女のネット投票がスタートしてからは彼女も慎重になったのか撮れ高減ってましたしこの辺が潮時ですかね。へっへへ」

  *

 カウンターに立つ初老のくたびれたバーテンダー、まばらな客たち、互いに無関心な者たちの間を、静かに流れるジャズとグラスの音が満たす。

「ところでV、○社のほうはどうだ?」
「順調ですよ。あそこの常務は下半身が緩いね」

 Vの調査報告の内容は多岐にわたる。彼の腕を信用したWが、さまざまなターゲットの身辺を洗わせているのだ。
 油断のならない男ではあるが、使い方さえ間違わなければ役に立つ。

「これが六本木の路上で殿ご乱心の様子。で、こっちの女の子連れてホテル入るとこをパシャリ」
「○社の社長のその後は?」
「睨んだ通り反社とズブズブ。証拠もじきあがります」

 Wは日本屈指の業績を誇るA社でトップにのぼりつめるため、これまで人生を掛け働いてきた。もともと十分に有能な男であり役員手前までは順調に出世を重ねてきたが、上に行けば行くほど壁は高く敵は手強くなる。K大閥といっても付属小上がりのサラブレッドたちと、大学から入った彼のような庶民出身とでは生来のコネが違う。困難な状況を打破するため、彼がVを使った「情報戦」を仕掛けるようになったのは十年ほど前のことである。結果としてWは競合他社や社内のライバルに先んじて業績を上げ、現在のポジションを確立した。

「○社は?」
「仕事一筋のワンマン社長ですな」
「そんなのはわかっている。あそこの役員会はあってないようなもの。社長を落とさないことには始まらんのだぞ。何かないのか?」
「最近人使いが荒いなあ。今度家族の方を洗ってみますよ。跡継ぎが立派なドラ息子に育って入社したんでそっちから何かしら出てくるんじゃないっすかね」

 最新の情報セキュリティで守られた企業の機密情報に比べ、プライベートは幹部といえどもガードが緩い。下半身事情や夜の街での評判はもちろんのこと、家族や近親者の醜聞、不祥事、社内政治におけるライバル関係など、掘れば何かしら出てくるものがある。そういった情報をネタにつつくことで自らの意に沿うよう動かすのは、Wの得意とするところであった。
 まさにさきほどVがWに対して試みた「脅し」と同じ力学を働かせるわけだが、Wの場合はもう少し慎重かつ巧妙で、彼はあくまで味方を装い親身になって接近するのである。それでいて、「本当にたまたま」「不都合な事実を」知ってしまったという体(てい)で心理的な揺さぶりをかけ、しかしあくまで心配する気持ちを前面に出しつつサポートを約束し、情報の秘匿を誓う。不安にかられた相手はころりとWの手の内に落ちるといった具合である。

 Wの人間籠絡術には、彼が若い頃から意識して築き上げてきた誠実かつ真面目、それでいて物腰柔らかくウィットに富むという魅力的な人物像も大いに寄与した。A社きってのエリートとしてWの名は人づてに広がっていたから、誰もが彼のことを信用し頼りにする。盤石の評判と相手の急所となる「情報」を武器に、Wは名うての要人たちと信頼関係という名の「依存される状況」を作り出す。彼の人脈はすでに財界を超え、政治や官僚の世界にまで広がっていた。

 Wは徹底していた。
 弱みを握った者にもそうでない者にも、Wは多額の金品を贈りダメを押す。ただでさえ彼に恩義のあるものたちは、これで完全に逆らえなくなる。もちろん金品は彼が知人や親戚名義などで持っているトンネル会社を複雑に経由し足がつかないよう工作する。

「あーあ。またハゲ散らかしたおっさん連中の追っかけ生活に逆戻りかあ」
「頼りにしてるぞ」
「今度『例の接待』に私も呼んでくださいよ」
「なんでお前を俺が接待せにゃならんのだ。まあしかし感謝してるよ。落ち着いたらギャラは色をつけてやる。たっぷりとな」
「へへへ。頼りにしてますよ」

 金で動かぬ相手には女を贈る。Vの言う「接待」である。
 要人接待の世界に綺麗事は通用しない。若く美しい女性をどれだけあてがえるかで成否が決まる世界だが、WはこれにFを利用していた。
 Fの勤める大手広告代理店はその手のつてが多いし、起用したタレントやモデル、グラビアアイドルや売出し中の卵たち――いわゆる「港区女子」と呼ばれる女性たち――をクライアント接待の場に駆り出すことも日常的に行われている。

 WもつまりE通堂の重要クライアントとして、本来接待される側でもあるのだが、彼はそれを自らの人脈構築に利用していた。
 Fには大量の契約発注を盾に、粒ぞろいの女性のアテンドを要求する。彼女らには酒席での「役割」と、多くの場合その後の「アフター」まで暗黙の了解が存在しており、事務所や代理店からのプレッシャーに涙を飲んで若い身体を捧げる者もいれば、拒否して仕事を干され業界からの退場を余儀なくされる者もいる。
 女たちが若さと美を夜ごと散らしてゆくそんな裏社交界で、Wの評判は悪くなかった。彼は難色を示した女性には無理強いせず仕事を干したりもしない一方で、枕営業を厭わない者には法外な金を掴ませた。無論A社絡みの大小さまざまな仕事を回すし、E通堂にも彼女らを起用するよう圧力をかける。結果今ではWのためいつでもクライアントと寝てくれる女性を大勢抱えるに至り、一種の愛人バンクの様相を呈するまでになった。
 肥溜めの中のクリーンさと、万一事が漏れても握りつぶせるだけの各方面の人脈という抜かりなさの両輪をうまく使いこなしているのだ。


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