昔の男との邂逅B-7
「ん、そう……なのかも」
「わかった。それ以上は言わなくてもいいから。でもこんなことしないで。あたし、木綿子ちゃんが好きだから」
こんなふうに、器が広くなれないことに、どこか苛立っているのかもしれなかった。
亨と加奈子との間柄に、嫉妬して。
理央に嫉妬されても自分が悪いのかもしれないと加奈子は客観的に考えていてーー
昂る気持ちを何とか抑えて、木綿子は加奈子の腕に包まれて眠ってしまったのだった。
*
加奈子の方は、なかなか寝付けなかった。
強引に発情させられ、ぬるぬるとした秘部を洗い流してしまおうと、バスルームへ向かう。
火照った木綿子の体に抱きしめられて、汗もかいてしまっている。
「ふぅ……」
汚れた下着をバスルームで手洗いしたあと、熱い湯で体を洗い流す。
隼人の時も、木綿子の時もーー佳織とは一度二人で交わってしまったとはいえ、やはり理央との行為が前提だったからこそ、できたのだと実感する。
(理央、起きてないよね。寝たフリしてたかな……。もしバレてたらヤキモチ妬いてるだろうな……)
そんなことを思いながらバスルームをあとにする。
理央と木綿子には悪いが、自分の寝室でまた寝付ける自信がなかった。
理央の部屋へと向かい、シン、と静まった部屋の中に入る。
普段あまり入ることがないが、落ち着く匂いのする部屋だった。
(勝手に入ってごめんね…)
理央の布団にくるまると、さらに理央の匂いに包まれる。
あまりオスくさくない彼の香り。
かなり気を使っているのだろう、部屋は男性特有の汗の香りなどがしなかった。
安心しきって、うとうとしていると、ゆっくりと部屋の扉が開く。
メガネを枕元に置いているが、ぼやけて見える背丈から理央だということがわかった。
「ごめん……勝手に入っちゃった。なかなか寝付けなくて……」
体を起こして謝ると、薄暗い中、理央が布団に入り込む。
ぎゅぅうっと抱き寄せられた。
そして唇を奪われる。
ゆっくりと、ねっとりと舌が口腔内を這う。
横向きの体勢で、加奈子の背中は理央の右手に引き寄せられた。
隣の部屋に柚木がいることを考えると、これ以上のことはしてこないだろう。
そう思いながら、加奈子も舌を差し出して、ゆっくりと絡めた。
ちゅ、ちゅう……とお互いの舌に吸い付く音が静寂な室内に響く。
唇が離れると、理央がとても切なそうな顔をしていた。
「どうしたの? いないのわかって寂しくなっちゃった?」
木綿子とのことを気にしないように、平然を装って加奈子は聞く。
つんつん、と頬をつついた。
「ーーごめん」
謝られて、気づく。
ああ、先程、きっと理央は起きていたのだと。
「ーーあたしに謝るようなこと、何したの?」
理央を安心させたい一心で、ふふっと加奈子は微笑む。