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アンソロジー(三つの物語)
【SM 官能小説】

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秘密 ……… 第一の物語-5

触れてくる彼の手や指、息づかい、唇、そして私の体の中心を貫いてくるもの……そのどれをとっても私が経験したことがないものだった。私は肉体から若さを剥ぎ取られたことで、逆に肉体の飢えと渇きをはっきりと自分の肉奥に感じることができた。

キスは、いつのまにか私の方から求めるようになった。アキオさんの香りを胸の深いところまで吸い込み、彼の頬を優しく両手で包み込む。彼の薄い唇のあいだから零れそうな白い歯がのぞいたとき、その唇に私は吸い込まれそうになる。唇を重ねたときから私の中の曖昧な部分が明瞭な輪郭へ甘く凝縮し、身体の内側が隅々までゆるんでいく。
互いの体がゆるやかに重なり合う。それはとても自然に感じられた。私の乳房に彼の広い胸が覆うように押しつけられたとき、彼の胸肌の厚みと滑らかさとともに、彼の胸の奥から熟した果汁の滴る音が聞こえてきたような気がした。
隆起した胸の筋肉はとても堅かった。今にも弾けそうな彼の胸板が私の乳房を烈しくこねた。

淡い部屋の光が肌に滲み入ってくる。私は自分の風景にもどっていくような錯覚を体に覚えていた。窓に降りそそぐ雨は止みそうもない。
私は眼を閉じた。彼の繊細な手、腕、胸郭、腹部、そして締まった太腿の筋肉が雨の雫を引き、まるで瑞々しい樹木の葉に水滴が宿ったように光の粒が瞼の中で煌めいている。私は彼の肉体に流れた雨露に体のすみずみまで潤され、湿らされる。それは私のどうしようもなく抑えきれない欲望の飛沫となり、肉奥から溢れ出ようとする。
そして彼のしなやかな指が内腿から這い上がり、陰毛を擽(くすぐ)るように撫でたとき、私の脚は自然に開いていった……。


都会の喧騒から隔離されたように、この家の夜は研ぎ澄まされたように森閑としている。
夫がこの家からいなくなったというのに私の心は密かに充たされていることを感じていた。それはきっとアキオさんとの秘密の関係がもたらしている……そう思いながら、私は妻として罪悪感など微塵もいだいていない。
次はいつ彼と会えるのだろうか……ふと気がつくと、彼のことばかりを考えている自分がいた。
アキオさんといっしょにいると、私がこれまで気がつかなかった懐かしいものが込み上げてくる。彼の柔和な顔に、私は不思議な胸の鼓動と何かしら危険で甘美な物憂さを感じた。彼の形のいい鼻梁と淡い薄桃色の唇、優雅すぎる彫刻的な頬や首筋の稜線。彼の体には私が愛おしく求める色彩が溜められていた。

彼を風にゆらぐ樹木の木洩れ日の中で見たら、とても美しいだろうと思った。私は彼と会うとき、いつもそのことを想像してしまう。瑞々しく、若々しい琥珀色の胸郭、しなやかな腕、そしてピンと張りつめたお尻や太腿の筋肉が風にそよぎ、光の零をいっぱい浴びた姿。そして私の色濃い欲望を掻き乱す彼の指。
いっしょにいると彼自体が鏡のように感じられる。彼の姿が私を映し出している鏡面のような不思議な感覚だった。鏡は私の体の中の忘れられた部分を目覚めさせる。夫にこれまで一度として感じたことのないもの、それは、おそらく夫と交際を始めたときから、結婚して、今にいたるまでの長い時間の中でさえ眼を覚ますことのなかったものだった。

 ベッドの中の彼は、唇と指でとても優しい愛撫を私に与えた。これ以上のものを感じたことがないような至福の愛撫だった。体を愛撫されることがこんなに心地よいものだとは思わなかった。
彼と私の肌が絡み、互いの湿り気を絡ませ、私の欲望はどんどん深められていく。彼が私の咽喉の奥から息を吸い込むと、胸の奥が切なく痛むように私は彼を欲しがる。おそらく、高校生だった彼のキスを受け入れたときからずっとそうだったのもしれないとふと思う。
彼の唇と指が私の身体のあらゆる部分を這いまわり、肌の毛穴まで刺激し、潤ませ、火照らせる。彼はとても長い時間をかけて焦らすように私の体を息吹かせる。私はその時間に溺れていく。そして開いた私の太腿のあいだに顔を埋めた彼は、腿の内側を指でなぞり、頬ずりし、唇を押しつける。唇と指は交互に陰毛をかき分け陰唇の淵をたどり、私を優しく潤ませながら割れ目に忍び込んでくる………。



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