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アンソロジー(三つの物語)
【SM 官能小説】

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秘密 ……… 第一の物語-10

私は夢から揺り起こされたようにはっと目を見開いた。
目の前に笑みを浮かべた彼がたっていた。そして不意に彼の唇から吐かれた言葉は、私を深い奈落の底に突き落すものだった……。

正直に言いますが、ぼくが本気であなたとつき合っていたわけではありません。そんな顔をしないでください。ええ、ぼくも久しぶりにあなたの体をいろいろと楽しませていただきましたが、あなたもそれで満足していたのではありませんか。お互いに楽しめる秘密をもてただけでいいじゃありませんか。
はっきり言いましょうか、ぼくはあなたをここにその姿で置き去りにします。あなたをここに捨てるということです。悪く思わないでください。ほら、鏡張りになった天井に映った自分の姿をよく見ることです。ぼくに捨てられた憐れな体の隅々まで。年増のあなたが、ほんとうはどんな裸をさらしているかわかるでしょう。ぼくとの秘密によって弛(ゆる)んだ、あなたの心と体のほんとうの淫らさが。でもぼくはあなたのその姿をもっと膿ませ、色濃く汚したいのです。
実は、ある男にぼくたちの秘密について話してしまったのです。そしてぼくが今、ここであなたを捨てることも、そして二度あなたと会うことがないことも。なぜなら、ぼくらの秘密は、もう秘密でなくなったのですから。
悪く思わないでください。ぼくはあなたをここに放置したままこの部屋を去ります。あなたは逃げられない、誰も助けを呼ぶことはできない。でもぼくがいなくなったあと、しばらくしたら男がここにやってきます。あなたを拘束した枷と首輪の鍵をこれから渡すことになる男です。
ええ、その男は、あなたとぼくの秘密を話した男です。意外なことに彼はあなたのことをよく知っている人物でした。あなたもその男のことをよく知っています。
なぜなら彼は、あなたの家の庭の手入れを長年やっている庭師の男だからですよ……。

 突然、浴びせられた言葉に私は気が動転するように頭の奥がゆらいだ。
なんですって……いったいどういうことなの……いっ、いやよ、この革枷を外して……。
声にならない言葉が唇に噛まされた口枷の奥で響き、唇の端に唾液が滲んでくる。私はもがき、喘いだ。もがけばもがくほど手首の皮膚に革枷が軋みながら喰い込んだ。

あなたの秘密をその男によってもっと濃くできることを期待していますよ……と言ったアキオさんは笑いながら私の頬にキスをして部屋から出て行った。

私は無残に放置された。しばらくするとあの男が、あの庭師がここにやってくる、こんな姿を私はあの醜い、身の毛のよだつような男に晒すことになる。私は無駄な身悶えを繰り返した。手首と足首を締めつける革枷はけっして解くことはできなかった。首輪が咽喉元を息苦しくする。 
あの男がここにやって来ることを考えただけで羞恥と怯えが虫酸のように体の中を這いまわる。
誰か……誰か助けて………。声にならない声は、私の中の秘密に向かって叫んでいるようだった。でも秘密は冷ややかに私を笑っているような気がした。

その時間はとても長く感じられた。まぶしすぎるほどの光の渦で満たされ部屋で、私はその残酷なほど明るい光の中に、彼に捨てられた無残な肉体を晒されている。あまりに明るすぎる光によって見え過ぎる、惨めな女の裸体の隅々までが容赦なく天井の鏡に映し出され、むき出しにされる。
そのとき部屋の扉の外で足音が聞こえた。そして、ガチャリと扉の取手が回った。
眼を凝らすと、扉の入口に、あの庭師の男が淫靡な笑みを浮かべ、私にじっと視線を注いで立っていた………。




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