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感星の惑覚
【ショタ 官能小説】

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ぼくと奥さまの一夜-3


 幹部さんはぼくの耳もとでささやくように、だけど強い口調で言いました。

 「あのひとは、私にとって大事な大事なひとなの。だからウチで一番大事なキミに役目を背負ってもらったの。
 でも、これからキミに新しい仕事が来たとしても、それはきっとキミのチカラだからね。
 あのひとにそんなチカラありはしないんだから。」

 そう言って幹部さんはコーヒーを飲みほしました。ぼくも飲みほしました。すると幹部さんは、ぼくの肩を抱くようにして言いました。
 「ごめんね……」
 その一言を聞いたとき、ぼくは幹部さんをいつもの名前で呼びそうになりました。しかし、幹部さんは言いました。
 「……このコーヒー、甘くないヤツだったのね。」
 あやまる理由が違っていました。

     ○

 それから数ヶ月後です。
 ぼくは、ドラマの撮影現場に通っていました。
 役は全くドラマの筋に関わらない立場だけど、ぼくは初めてナマで知るドラマの舞台裏に夢中でした。
 (まあ、あんなことでデカい役もらったって、そんな実力ないからなぁー。)

 その日は、営業を早く終えたフードコートでロケがありました。
 撮影が終わって、フードコートでちょっとしたお食事会が開かれました。
 ぼくは名前が知られた同じ年ごろの役者さんたちの姿を遠くに見ながら食事をしてると、
 「キミ、」と女の子に声をかけられました。
 それはぼくより少し年上の、子役時代からいろんな話題作に関わってくるクールな女優……ゆなさんでした。

 「ずいぶん、凝った役もらったわね。」
 そういうゆなさんに、ぼくは首をふりました。「そんなことないですよ。セリフもないし……」するとゆなさんが首をふりました。
 「違う、長いことこういう仕事やってるからなんとなく感じるの。
 キミはしょっちゅう、主役のひとと後ろ姿がいっしょになるように写されてるもん。
 もしかしたらドラマの最後あたりで、キミが伏線回収の人物にされるかもね。」
 ゆなさんはぼくの頭をつついて言いました。「アタマきたえておいたほうがいいわよ。とんでもなく長いセリフ言うことになるかも知れないからね。」

 そういうとゆなさんは、他のグループの座るテーブルに向かっていきました。
 (うわ、なんかすごいこと言われたぞ……)とぼくがぼんやりしていると、誰かがぼくの肩に手を置きました。

 (えっ!)ぼくは立ちあがって「お疲れさまです!」と声をあげました。ドラマの原作の分野で広く知られる男性の偉いさんだったのです。
 「おう!」偉いさんはぼくの肩に手を置いたまま言ってあたりを見回し、ゆなさんを見つけると近づいていきました。
 ゆなさんも周りの女性達も偉いさんに気づいて、席を立つと「お疲れさまです!」と声をあげました。
 偉いさんは、ゆなさんに言いました。
 「はなさん、おめでたなんだって?」

 するとゆなさんは満面の笑みをうかべました。
 「そうなんですよ!ママとパパ、やってくれたんですよ!アタシ19歳にして、末っ子枠から飛躍できるんですよ!」
 周りの女性達は驚いてしきりに「おめでとう!」と声をあげています。ゆなさんは続けました。
 「で、アタシ、ママに赤ちゃん産まれたらしばらく育児に専念しようと思ってるんですよ!」

 ぼくが思ったことをそのまま、偉いさんが言いました。
 「なるほど、育休はゆながとるのか。」


  【おしまい】
 
 
 
 


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