運命の放課後-2
「2人ともそんなに緊張しないでいいよ……」
イケメン医師が優しい声で話しかけてきた。車が発進する。
「でも……あの……」
由衣は何かを言おうとして口ごもった。夏美は彼女が何を言おうとしたのか、何となくわかった。勢いのままにここまで来てしまって、この医師に変に思われているんじゃないかと躊躇っているのだろう。
確かに学校での特別検査の後で、すぐにこんなことをするのはおかしいかもしれないと夏美は思ったが、それでもいいと思った。
とにかくこのイケメン医師と、もっとお話しがしたい。もっと体を触ってもらいたい。そんなふうに思っているうちに、ついつい夏美の口からとんでもない言葉が飛び出していた。
「私、先生に全身好きなように診察してもらってもいいんです……」
一瞬、由衣が驚いたようにこちらを見たが彼女もつられるように口走った。
「私も…体の隅から隅まで診察してください」
「まあまあ…」
医師は笑いながらハンドルを握って車を走らせた。
◇◇◇
柳瀬拓也は、後悔と不安で揺れていた。
上からの要請で仕方なく検査医師として中学校に赴いたのだが、思いのほか手が掛かる検査だった。最初のうちは100人近くも女生徒たちの尿検査をしなければならないということで、拓也は何とも気が重かった。
しかしいざ終わってみれば、実際に感染症にかかっている女子は1人も見当たらず、その点では拓也はほっと胸をなで下ろしたのだった。
今回の検査では、拓也はただ女生徒たちの尿そのものの検査をするだけでは退屈なので、女生徒たちに検査という名目で彼の目の前で放尿するように指示をしてしまったのだ。これは検査医師という立場を悪用したことに他ならない。
あまりにも無茶な指示なので、女生徒たちから強く反発されるのではないかと思っていたのだが、それは取り越し苦労だった。彼女たちは恥ずかしがるのは最初のうちだけで、拓也が説得するとみんな素直に従ってくれた。拓也は生涯でこれほど胸が高鳴る体験は初めてだった。
若い女の子たちの瑞々しい太ももの間から、レモン色の液体がはじけ飛ぶ瞬間は、思った以上に刺激的で拓也の胸を高鳴らせたのだ。
しかし拓也はその日の全ての検査を終えてから、急に冷静さを取り戻した。今日の行いは検査医師としては許されないことだった。こんなことが学校や病院に通報されたりすると、拓也の医師としての生命は終わりを遂げるだろう。こんなことで自分のこれからの輝かしい人生を棒に振りたくは無かった。
今更ながら欲望に突き動かされて暴走してしまった自分自身を呪った。心の中で彼女たちに告発されないことを祈るしか無かった。いろいろと複雑な思いを抱きながら、拓也は機材を車に積み込んで、学校を引き上げようとしていた。
まさにそのときに、あの2人の女生徒が駆け寄って来たのだった。それは今日、一番最初に検査した生徒……桐原夏美と澤野由衣だった。自分好みのとても可愛い子たちだったので、拓也は彼女たちの名前までよく覚えていた。