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妻を他人に
【熟女/人妻 官能小説】

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再会-3

 そんなことを考えていたら、OLと思しき女性グループが話しかけてきて握手とサインを求められた。今や二人ともそれなりの有名人ということらしい。夫の話題が終わりほっとするゆき。
 サインなどしたことのないゆきたちは一度は断るも、雑談で盛り上がるうちに結局ハンカチやら掲載された雑誌やらにサインを書くことになった。楓は流麗なローマ字の筆記体で「それっぽい」雰囲気を出すというサービス精神でOLたちを喜ばせ、ゆきは生真面目な楷書体で皆を困惑させた。ハンカチに緑の縁取りがしてあったため、「ゆきちゃんなにこれ? 離婚届?」と楓から突っ込みが入り、皆に笑われた。「離婚」の二文字に、ゆきの胸はまたチクリと傷んだ。

「ご、ごめんね……! 私こういうの慣れてなくて……ほんとにごめんね!」と謝るゆきに、「全然大丈夫です!」、「ゆきさんらしくて可愛い!」、「ほんと、ネットで見た印象どおりの人だなって……」などと口々にフォローするOLたち。
「そ、それはそうと! ゆきさんやっぱりショートケーキ食べてるんですね!」
 一人が慌てて話題を変えた。
「ほんとだー! なんか可愛いー!」、「この子、大学時代からずっと食べてるのよ」、「ほんとに好きなんですね!」、「どうして太らないんですか? ずるい!」、「この前ピンスタでおすすめしてたコンビニのショートケーキ、私も買いました!」、「イチゴはやっぱり最後に残しちゃうんですね」、「旦那さんがいなくて『あーん』できないときはどうするんですか?」
 各所のインタビューなどでゆきのショートケーキ好きは擦られ続けている。最後はゆきが楓にイチゴを「あーん」するシーンのセルフィーを皆で撮り、OLたちは去っていった。

  *

「そうそう! そんなことよりですね、再会したときから言おう言おうと思ってたんですけど、楓さんて、実は私の同僚で大親友の麗美って子とそっくりなんです! ほら、この子!」

 ゆきは結婚式でスピーチしてくれた麗美の写真、その後夫も含め三人で撮った写真などを見せた。しゅっとした美人顔、細身ながら出るところはちゃんと出ているグラマラスな体型、クールな雰囲気など、あらためて見ても楓にそっくりである。

「へー、たしかに似てるわね」
「でしょー? すっごくしっかりさんで今でもお姉さんみたいな存在なんです。そういう意味でも楓さんに似てる……」
 ゆきのスマホに映し出された麗美の写真をパラパラとめくっていた楓の口元が緩む。ふと見ると、顔には意地悪な笑みが広がっていた。
「ねぇ、ゆきちゃん。当ててあげようか?」
「?」
「あのね、旦那さんと麗美さんて仲が良くて、ゆきちゃん実は二人にやきもち焼いてる。ひょっとして旦那さんと仲良くなったのもゆきちゃんより先とか? あ、そうか! たとえば二人は同じ大学出身で、学生時代からの友人なの。で、ゆきちゃんは自分より旦那さんとの付き合いが長い麗美さんが羨ましいし悔しいし、なんなら二人が過去付き合ってたかもしれないとさえ疑っている!」

 あまりに図星過ぎてポカーンとしてしまうゆき。
 ゆきの反応を見た楓は立て板に水でさらにまくしたてる。

「でもそんなこと怖くて聞けないし、麗美さんのこともゆきちゃんは大好きだし親友だし嫌いになれない。やきもち焼いていることすら悟られたくない。だけど、二人が楽しそうに会話してるとどうしてももやもやしてしまう! どう? 当たってる?」
「そ、そそそ、そんなこと……」
「あるよね?」
「はい……」
「やったー、当たったー!」
「なんでー? ジャーナリストさんて探偵みたいな推理もできるんですか? すごいですね」
「ふふふ、ほらこの写真なんかわかりやすいんだけど、旦那さんと麗美さんが楽しそうに会話してるのを少し後ろから見てる花嫁さんの表情見て!」
「私の表情そんなに変ですか? 普通にしてるつもりですけど……」
「この顔を見たときね、昔Dくんと私が『仲良し』してるときのゆきちゃんの視線思い出しちゃった。ゆきちゃんこういうとき無理して自分も笑顔を作るんだけど、頬がほんの少しだけぷっくり膨れるの。ほらこれも。可愛い!」
「そ、そんなに膨れてますかね?」
「あの視線を実際に浴びた経験のある私じゃないと気が付かないかもね。うふふ。でもよく見ると笑顔だって目の奥が笑ってない」
「むーー。言われてみればたしかにそんな気も……自分でも知らなかったです」
「それでね、笑っちゃうのがここからで……」
「もうさっきからずっと笑ってるじゃないですか」
「次の写真でゆきちゃん、旦那さんと麗美さんの間に移動して……」
 すっと二人の間に位置をとる新婦。
「ほらここで、後ろから新郎さんの腕を掴まえてる」
「わ、わかりましたからもうやめてください」
「で、次の写真では二人の間にちゃっかり割って入ってるの。健気だわ」
 ゆきのやきもち焼きを面白そうに解説してみせる楓。
「あくまで和やかに、旦那さんと麗美さん両方に平等に笑顔を向けながら二人を引き剥がしてるのがポイントね。相当な手練れだわ。プロのやきもち焼きにしかできない仕事ね」
「プロのやきもち焼きってなんですか、もう!」

 やきもちを焼いていたことも、今となっては良い思い出。
 今のゆきには、やきもちを焼く資格すらない。

  *


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