姉のカラダ-3
「えっ…?」
はっきりと聞こえた。だが聞き間違えか??そう感じた健斗。戸惑いを隠せない。が、日菜の顔は真剣だった。
「で、でも…」
したいかしたくないかと言ったら、したい。だが姉と弟の関係、常識的に考えれば進んではいけない道だ。頭の中に両親の顔さえ浮かんで来る。だがその一方で血縁関係が恋愛を妨げる理由になるのが嫌な気持ちもある。健斗は昔からお姉ちゃんが大好きだから…。そんな葛藤を理解しているような日菜は健斗の手を握った。
「健斗、お姉ちゃんの事、好き?」
意地を張らずに素直に答えて欲しい、そんな気持ちが日菜の瞳から伝わる。健斗は姉を傷つけたくない、そして自分に素直になるべきだ、そう思った。
「好き、だよ…。」
不器用ながらも誠実な口調でそう答えた。そして健斗の恋心を全て奪ってしまいそいな笑みを浮かべた日菜。
「私もだよ、健斗…。」
そう言って微笑しながらも真剣な目で健斗を見つめ、唇を寄せてきた。
「!!」
健斗は思わず目を閉じた。昔からいつも自分を守ってくれた、いつも優しくしてくれた。いつも自分を安心させてくれた。健斗は両肩にそっと添えられた日菜の手から、これまでと同じ安心感を得る。
(ああ、俺はいつもこの愛に守られていたんだ…)
小さな頃からずっと一緒にいてくれた姉。その愛を拒む理由も気持ちも見当たらなかった。
(私のファーストキスは健斗に…)
日菜にとっても初めてのキスだ。間違いなく緊張する。だがきっと後悔と言う選択肢はないような気がする。きっと素敵な思い出としてその胸に刻まれるであろう予感しかなかった。そして相思相愛の姉弟の唇は重なった。
(ああ、姉貴とキス…)
強張っていた体から力みがスッと消えた。柔らかな唇は柔らかな布で体を包まれているかのような心地よさを感じる。そして日菜の温もりが幸せをを感じずにはいられなかった。
それは日菜も同じであった。初めて異性に愛を感じたのは健斗。姉弟であろうが日菜の初恋の相手は間違いなく健斗である。初恋の相手にファーストキスを捧げ、やはり後悔はしなかった。きっとこれから健斗に恋人が出来、そして自分だけのものではなくなるだろう。だが今抱いている健斗への思いは本物だ。姉としての愛情、女としての愛情…、その2つを分けて考える必要性などない、きっと私は健斗を一生愛し続ける、そんな確信を得た日菜であった。