運命に戸惑う、嘆きのロザリオ-1
デスとの戦いから早いもので１ヶ月が過ぎようとしています。どうも、好野広樹です。
あの後、無事に退院できた俺は例の事をなるべく考えないようにしながら日常生活を楽しんでいます。
「広樹さ〜ん」
今のところ、これといった追加情報もなく。
「あぁ〜！ もう、またですかぁ！」
ドミドも、デスクラスのホルドミドがそうそう現れる訳もなく。平和なものです。
バシン！！
俺の右側頭部に激痛が走り、痛みは頭部全体へと広がった。
「ってなぁ！ 何すんだよ！」
机の向かいに座っている緑。手には丸められた教科書が握られていた。凶器はこれだな。
「だって、また広樹さんボーっとしてるんだもん」
「だからって殴ることないだろうが！」「いえ！今日という今日はゆるしません！ いつも私の事を無視して！」
緑の髪は無意識の内に漏れだしたオーラが風を起こしユラユラと逆立っている。
「あれ、好野君と西島さん」
小鳥のさえずるがごとく、かわいらしい声。
「皐月ちゅわぁぁん！ どうしたのこんなところに？」
皐月ちゃんは微笑みを俺に、いいか俺に対して向けてくれた。
「ちょっと調べたい事があって。好野君達は？」
いつぞやの図書館。
今日はレポート制作のためにここに赴いた訳だがすっかり忘れていた。
「もちろん、皐月ちゃんが来るのを待っていぐへ！」
後頭部に力のこもった緑の一撃が入った。
「嘘を言わないでください」
「ふふふ、仲がいいですね」
「ええ とっても」
緑は怒気のこもった笑顔で、これまた怒気のこもった声色で言った。
「ええい！うるさいぞ！ いっこうにはかどらんではないか！」
俺の右隣、緑の斜向かいに腕組みした凪がイライラした様子でいた。
「あれ？ いつから居たの？」
「初めからおった。貴様が私にドミドバスター資格試験の勉強を教えてやるっと言って無理やりつれてきたのではないか！」
凪はあの一件のあとドミドバスターになるべく猛勉強をしているのだ。俺と緑は中学の時に飛び入りで試験を受けて取得済みである。
「そもそも、お前たちは」
その時。
（好野、西島君）
感情がこもっていない声が直接頭に届く。
「なんだ？」
（仕事だ、警察から連絡があった。今すぐ来てほしいそうだ）
「被害とかは出てるんですか？」
（被害は今のところない。ギレドミドが一体現れたそうだ）ギルドミドとは、ホルドミドよりも力を持たないがネルドミドの数倍の力をゆうしているドミドのことである。ちなみに獣の形を取っている場合が多い。
「よしわかった。いくぞ緑、凪」
荷物をまとめて図書館からとびだす。
結局、自分が何者なのかもわからず。さらなる謎が浮かび上がったけど。
俺の日常は変わらずに動き続けている。
いつかはすべてがわかる日が来る。
そう信じて俺は今日も歩き続けるのだ。
「なんだか、広樹さんらしくない締め方ですね」
「うるへー」
〜完〜