『beat mania UDX』より不夜城の仲間たち〜鉄火-1
春。それは人が新たな一歩を踏み出す季節でもある。
『鉄火!配達手伝ってくれぃ!』
「おう、任せときなじいちゃん!」
ここは東京にある、とある寿司屋「鉄寿司(くろがねずし)」
そこに生まれた少年、鉄火(てっか)は高校から帰ってくると、いつも寿司の配達を手伝っている。
燃えるような真っ赤な髪が彼の一番の特徴である。
だが、その赤い髪以上に特徴的なのは彼の飼っている生き物にある。
「行くぞファーボ!」
『おう』
鉄火が掛け声を出すと、どこからともなく鉄火の肩に小さな生き物が乗ってきた。
鉄火の頭程の大きさに緑色の二頭身の体。小さめのマフラーで体をぐるぐる巻にしている。
この謎の生物こそ、鉄火が拾った「宇宙人」ファーボだ。
鉄火は近くにあるゲームセンター『不夜城』に通っている。
目的は、同じ高校の生徒である彩葉(いろは)と理々奈(りりな)が最近一緒にゲームセンターに通い始めたという噂を聞いたので、二人に近付くためにという、いかにも高校生らしい動機である。
そこで不夜城の仲間たちと知り合い、そこのゲーム機でぬいぐるみに化けていたファーボを捕まえた。
人の言葉を理解できるほどの頭脳を持っているのだが、自分自身のことは記憶がないらしい。
かろうじて、元々の名前はFB(エフビー)と言うことは思い出したらしいのだが、呼びづらいこともあり、鉄火にファーボと名付けられた。
今は、鉄火の部屋に居候(いそうろう)している。
そんなファーボを肩に乗せ、鉄火は寿司の入った鉄箱片手に配達へと向かった。
配達を初めて三年目。配達の運転技術は大分上がった。そのため、運転をしながら周りの景色を楽しむことも出来るようになった。
今日は配達の途中に、識の経営するゲームセンターの前を通りかかった。
そこで彼女を見つけた。
彩葉と理々奈と一緒に三人で入口前で話している。
鉄火は原チャリを止めると、しばらく女の子を見つめていた。