『beat mania UDX』より不夜城の仲間たち〜鉄火-3
「紫色のツインテールの子です……」
『ああ、セリカか。お前が来たときはいつもいなかったからな。あいつが俺にあだ名つけたんだぜ』
「……セリカさん」
『なんで名前言っただけで赤くなるんだよ……』
孔雀は大袈裟にため息をつくと、ベンチから立ち上がり鉄火に向き直った。
『寿司屋の長男だろ?いつまでもうじうじしてるなよ』
「はい」
『おう、その意気だ。まあ俺は応援してるぜ!』
「はい!ありがとうございます!」
鉄火は孔雀に一礼すると、店に戻っていった。
孔雀はセリカが片思いをしていることを知っていた。というより、セリカの様子を見ればあの鉄火でも判るだろう。
『悪いことしちまったかな……』
孔雀は多少の苦みを感じていた。
あそこで自分が何も言わなければ、鉄火はずっと片思いを自分の胸にしまっていただろう。
それでも孔雀は構わなかった。だが、それではあまりにも鉄火が不憫(ふびん)に思えた。
もしセリカがあいつとくっついていたら、鉄火はみんなと会うたびにその光景を見せ付けられるのだ。
戦わずに敗者になるのは辛すぎる。
『どう出るよ、ユーズ……』
ユーズはセリカの恋愛感情には気付いていない。
鉄火はセリカに、セリカはユーズに。片思いの連鎖が続く。
孔雀は苦笑いをその顔に一つ浮かべると、その場から立ち去った。
次の日、鉄火はいつもより遅くに学校から店に帰った、祖父から配達を伝えられた。
鉄火は祖父から配達先を聞くと驚いたが、ファーボを肩に乗せると配達へと出掛けた。
鉄火が着いた先……。そこは識の経営するゲームセンターだった。
『鉄火くん!』
入口には臨時休業の張り紙が張ってあったが、店内にいる識に呼ばれて奥へと入っていった。