『beat mania UDX』より不夜城の仲間たち〜鉄火-2
鉄火には最近気になる人がいた。
それは理々奈でも彩葉でもない。
淡い紫のツインテールを揺らす女の子。
『鉄火、配達』
「ああ、そうだな」
鉄火はファーボに促されると、目線を前に戻して配達に戻った。
だがその様子を見ていた男がいたことに、鉄火は気付かなかった。
配達を終えた鉄火が店に戻ると、見慣れた顔が一人カウンターに座っていた。
二メートル近い身長に引き締まった体、鉄火程ではないが、赤茶けた髪をヘッドギアを使ってバキバキに上げている。
「孔雀さん!」
『よぉう、鉄火』
孔雀は頼んだ寿司を食べ終えると、鉄火を誘って店を出た。
ゴトン。
『ほらよ』
「ありがとうございます」
孔雀は鉄火に缶コーヒーをおごり、一緒に近くのベンチに座った。ちなみにファーボは部屋に戻っていった。
『最近来ねえな。忙しいのか?』
「ええ、今日も配達がありましたし」
『他にもあるんじゃねえか?』
「えっ?」
『好きな子がいるから恥ずかしくて来れねえ……とかな?』
鉄火は飲んでいた缶コーヒーを軽く吹き出すと二、三回咳き込んだ。
『はっはっは!分かりやすいなぁ』
「な、なんで……!」
『お前が今日ゲームセンターの前にいたところを見たんだよ』
「なっ……!」
『ただでさえ頭が赤いのに、顔まで赤くしちまってよ。見てるこっちが恥ずかしかったよ』
鉄火は顔を真っ赤にしながらうつむいていた。
『誰よ?』
もうごまかしは効かないと悟った鉄火は、正直に話し始めた。