S・S作品詰め合せパック-1
●あの人は今●
はぁ……
給食のおばちゃんは、鏡に映る自分の姿を見ながら溜息をもらした。
もう歳かしら……。プロポーションはまだイケると思うけど、顔の張りも無くなってきたし、髪なんて艶が消えたわね。外見は私の命だつたのに……。
そう思いながら仕事着を身につける給食のおばちゃん。
白い帽子に大きなマスク。そして割烹着(かっぽうぎ)とビニール手袋。
給食は栄養の事はもちろん、衛生面にも気を遣わなければならないから大変である。
ただ、この仕事は彼女の第二の人生に合っていた。なぜなら、昔から子供が好きだったし、なにより正体を怪しまれずに仕事が出来るからだ。
「おばちゃん。今日の給食はなぁに?」
休み時間になり、生徒たち数人がワクワクしながら配膳室にやってきた。
「今日はちらし寿司よ」
おばちゃんは色鮮やかなちらし寿司を見せた。
「わぁ、きれ−い!」
一人の生徒が目を輝かせて言う。
それを聞いたおばちゃんは、全盛期を思い出して反射的に言ってしまった。
「コ・レ・デ・モ……」
そしておばちゃんは大きなマスクをはずし、裂けた口を子供に見せた。
久しぶりに快感をおぼえた口裂け女であった。