誠意-7
「 残るのか？ 辞めるのか？ 」
鈍い光の目が 醜い顔から舐める様に見つめて
「 営業課長は 降りて貰うが それでも良ければ 力になるぞ 」
優しい声音を 邪悪な光を帯びさせた目で 拓哉に言って来た
「 君の力に 私は期待しているから・・・」
立ちあがって 拓哉の隣に立ち 肩を叩くと
「 社長には 私が一言いえば 大丈夫だから・・・」
拓哉は項垂れ 立ちすくんでいた
「 後の事は また 相談しよう 」
肩を叩かれ 森の前を退席して 自分のデスクへ戻り
パソコンを開き 契約書を開き数字を確認すると
ーーー２億５千万ーーーー
拓哉は ガクっと 体を投げ出していた
辞めて 新しい職場を探して 収入は
マンションを買ったばかりで家計は苦しいと
麻衣が良く漏らし 最近パートを探し始めた処だった
課長職を降りても 収入は10パーセント位のダウン
営業成績を上げれば 不足分は 補える
拓哉は 自分の作った契約書を見ながら
そう結論を付けて残る事を選択していた
金曜日
森に呼ばれ 居酒屋の席で 大柄な体で
ビールを飲み干して追加を頼み
舐めるような目で 拓哉を見て
「 社長に 言ったんだが・・・」
大黒様を 潰したような顔の 分厚い唇が歪んで
「 私も 骨を折るが・・・」
言い捨て 嬲る様に見つめて来た
「 仕事を 辞めると生活大変だろうな 」
いたぶる様に言い 目の前のジョッキを空けて行く
拓哉は 黙って 森の言葉を聞き 項垂れていた
「 私は 君を買っているんだがね・・・」
目の奥に邪悪な光を帯びさせて
「 君は 私に どんな誠意を くれるのかね 」
拓哉が顔を上げると
「結婚して 何年だ？」
「3年に成ります」
「奥さんは お幾つかな？」
「27歳に成った処です」
「私から 提案なんだが」
拓哉が顔を上げると
「私は 川田君を守ろうとしているね」
嫌らしい目が拓哉をジッと見て
「 君から 私に 誠意を見せて貰いたいんだが」
森の嬲るような目を見て 目を外して
「 誠意ですか・・・」
拓哉は何を森が求めて来るのか 返事に躊躇していた
「 そうだな 私は聞いていると思うが独身でね 」
「 若い女性とは 縁が無いんだよ 判るかね？」
森の目の中の 淫靡な光を見て
拓哉は何を森が言って来たのかを理解していた
「 今夜 君の 家に招待してくれてね 」
舌なめずりしそうな顔で
「 君の誠意を 差し出してくれたら 嬉しいんだけどね 」
「私は 強引な事はしないよ あくまで 合意の上でね 」
「 わかるだろう・・・」
目の奥に揺らめく 淫靡な光に 拓哉は項垂れて 頷いていた
森が嬉しそうに立ち上がるり
「 では 君の家に招待されようか 」
店を出ると 目の前の酒屋で 赤のワインを2本抱え
拓哉のマンションへと向かった