第二十四章 背中-3
(いいの・・?お義父・・さん・・・
本当に・・いい、の・・・?)
『綺麗や・・・ホンマ。
同居しにこっち来た時会ってから、
ずっとそう思うとった・・・』
(う・・そ・・・)
『ホンマや・・・』
義父の言葉の一つ一つが鮮明に蘇る。
嬉しかった。
あれ程嫌っていた男なのに。
言って欲しかった。
ずっと待っていた気がする。
そう、あの言葉を。
『好きや・・あんたが・・・』
その言葉を心地良く再現すると、恵は隣で眠っている愛しい男に似た顔の唇に、そっとオヤスミのキスをして呟いた。
(私も好きです。お義父・・さん・・・)
いつしか、恵の心から夫への怒りも失望も消えていた。
そして罪の意識さえも。
恵の心は何ヶ月ぶりかの平穏を取り戻していた。
そして、これまで味わった事のない禁断の実の甘さに酔いしれる決心がついた。
大きなため息を静かに吐くと、直ぐに幸せそうな寝息をたてていくのであった。