第二十二章 告白-5
二人の視線が絡み合う。
恵は腕に巻いているブレスレットをいじりながら恥ずかしそうに言った。
「でも・・私、性格キツイし・・・
お義父さんに嫌われているかと思っていたの」
「そんな事無いっ・・・。
ごっつ、ええ性格やで。
ホンマ、しっかりしとるし・・・
三人の嫁さんの中でもトビキリや。
白状するとやな・・・
あんたが、おったから同居する気になったんや」
「本当・・・?」
恵の瞳が見つめてくる。
啓介の心に入り込んでくる。
「ホンマや・・・。
アンタが頑張っとる事は、よう知ってたよ。
俺かて、事業やっとったから解かるけど、
最初から、ええ顔する奴にロクなんおらんのや。
その点、あんたは・・・」
「やっぱり、嫌ってたんじゃない?」
頬を膨らませて言う天使のセリフが可笑しくて、二人は思わず吹き出してしまった。
暫らくの間続いていた笑いが、真顔に戻った男の言葉で消されてしまった。
「好きや・・アンタが・・・」
義父からの決定的なセリフが女から笑顔を奪い去り、耳元まで赤く染めさせてしまった。
真剣な眼差しが嘘では無い事を物語っている。
恵は目を伏せる事も出来ず、その視線に犯されるかの如く瞳を潤ませていた。
義父の言葉が頭の中をグルグル廻っている。
これは恋の告白であろうか。
それは恵の胸に心地良く染み込んでいった。
重くなってしまった口を開こうとした時、啓介は無理に表情を変えて言った。
「で、出よか・・・?
靴・・買わな・・・。
さっき、約束したもんなぁ・・・」
そして伝票を持って足早にレジに向かった。
恵は見送りながら、言いそびれた言葉を心の中でそっと呟いた。
(私も・・・好きです。お義父・・・さん)