第二十二章 告白-4
「あほかいな。
女の盛りは五十過ぎてからやで・・・
三十なんて、まだ子供や・・・」
一瞬、恵の口元が緩んだ。
気を良くして言葉を繋ぐ。
「俺なんか若い頃、
女房、よぉ泣かしたけど・・・
死ぬ直前まで抱いとったで。
ええ女やった・・・
布団の上でもよー、泣きよったでぇ?」
「まあ?フフッ・・・」
遂に恵は小さく声を上げて笑ってしまった。
休まずに男が続ける。
「アンタは魅力的で美人や。
肌も白うて、スベスベしとる。
大丈夫や・・自信持ってええよ・・・」
恵の身体は何故か熱くなってしまった。
今は夫の話をしていたのに、義父が投げる言葉の内容に関心がいってしまう。
それよりも、あんなに嫌っていた関西弁が今は心地良く聞こえる。
恵は知らず知らずの内に話に引き込まれていった。
男も息子の弁護も忘れて、自分の恋心を告白している気分になってきた。
「綺麗や・・ホンマ。
同居しにこっち来た時会ってから、
ずっとそう思うとった・・・」
「う・・そ・・・?」
恵の胸が高鳴る。
恥ずかしさに赤く染まる顔を隠すようにグラスを重ねてしまう。
啓介は恵のグラスにビールを注ぎ足すと言った。
「嘘やないっ・・・。
この間、手紙もろうてホンマ嬉しかったんや。
うまい事いえんけど、胸がスーと軽ぅなった。
あんたはほんま、ええ子や・・・」
一気にまくしたてた啓介はグラスに残ったビールを飲みほした。
ゴクゴクと音を立てて上下する喉を恵はジッと見つめている。
興奮で荒い息を吐いている義父の表情が可笑しくてクスッと笑った。
空になったグラスにビールをつぎながら、尚も啓介の顔を見つめている。