第二十二章 告白-2
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「えぇがな、本当に・・・」
ビールを喉に流し込むと人心地ついたのか、まだすまなさそうな顔の恵に嬉しそうに啓介が言った。
そして次々とテーブルの上の皿を綺麗にしていく。
60歳とは思えぬ食欲は見ていて気持ちが良い程で、相変わらず音を立てる食べ方には感心しないのだが、恵は以前にあんなに嫌っていた気持ちを、どうしても思い出せないのであった。
遥か年上であるのに、やんちゃな子供のように思えてくる。
仲直りする前も美味しそうに食べる義父に対して、料理の作り甲斐だけは確かにあったとは思っていたのであるが。
自然と頬が緩んでくる。
口の廻りを油で光らせる義父が、その瞬間を逃すまいとオズオズと言った。
「それより・・な。悪かったな・・・」
「えっ・・・?」
義父の意外な言葉に恵は驚いた表情で声を出した。
「いや・・・な。
武の・・その、名刺な・・・
あれ、俺が連れて行ったとこもあるねん」
「えー、お義父さんが・・・?」
「そうなんや・・・。
アイツ、真面目やろぉ?
俺も遊びたかったし、何や・・そのぉ・・・」
天使の顔が再び例の表情になりそうで、慌てて言葉を足していった。
「そ、そんな顔すなや、
ベッピンさんが台無しになるぞぉ・・・」
懸命な表情に恵の口元が緩む。
「そうそう、その笑顔や。そのまま・・・な?」
男はホッとしてビールを口に含むと、女にも勧めた。
シラフで聞かれていると話し辛かった。
恵は少しずつではあるが勧められるままに飲んでいたせいか、頬が赤く染まっていた。