第十九章 裏切り4-1
【啓介と同居 三ヶ月目】
【20●1年3月21日 AM10:00】
翌朝。
ダイニングで。
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(あぁ・・・ほ、欲し・・い・・・。
お、お義父・・・さ・・ん)
コーヒーカップに溶け込んでいくミルクが渦を巻いて、恵の心の中と同じに思えてくる。
それに、あの時の残像が重なっていく。
ゴクリと喉が鳴った。
その音が恥ずかしく、耳元まで赤くなる。
ふと見上げると義父と目があった。
食い入るようにして見つめてくる。
恵は一瞬、戸惑ったが視線を反らさずにいた。
切れ長の瞳が潤み勝ちに光っている。
男も催眠術に掛かったように目を動かせないでいた。
二人の視線が絡み合う。
午前十時のコーヒータイム。
日を追う毎に、二人の間で口数が少なくなっていく。
それでも恵はこの時間がイヤでは無かった。
それを認める事にも抵抗がなくなっている恵であった。