第四章 二人きりのコーヒータイム2-2
金ならあった。
残りの人生を気楽に生きようと思った。
ただ、一人では寂しかったのである。
誰かと一緒に生活をしたかった。
一人きりの家で年老いていきたくは無い。
でも、自分の弱い心も見せたくはなかった。
それでわざと強がりに見せるため、同居する条件として家を買ってやる事にしたのだ。
そう、金で愛情を買うように。
恵が自分を嫌っている事は十分知っていた。
口調は丁寧なのだが、心の底では避けている。
啓介は、それはそれで都合が良いと思った。
武が言っていた恵の嫌いな振るまいを止めないのには、まだ理由があるのだから。
恵が魅力的すぎるのである。
しかも、どことなく初恋の人と似ていた。
初めて見た瞬間、ドキリと胸が鳴ったほどだった。
だからだろうか。
わざと感心のない素振りをみせた。
息子の武に「胸が小さい」など余計なことも言った。
本当は小ぶりながらも、形の良いシルエットをみせる恵のバストは好みだったのに。
妻の葬式以来の再会を楽しみにしていた啓介は、良い意味で期待を裏切られる。
精一杯のオシャレをして住宅展示場にあらわれた恵は、まるで天使のように思えた。
初めて会った時はギスギスした印象であったが、良い意味で年齢を重ねて艶と丸みが出ていた。
性格がキツク馬鹿正直に思い込むたちなのであろうが、人生経験豊富な啓介にとっては返って新鮮な魅力を感じるのである。
同居を始めてからも、啓介は意識的にぶっきらぼうな態度をとった。
初めから媚びるように機嫌をとって、逆に気持ちが引かれるのが怖かったからだ。