@闇バイト-1
「こんにちわ。浩市君はいますか?」
「あら、植山君。浩市は自分の部屋にいるわよ。どうぞ入って下さい。」
にこやかに迎えてくれたのは美人で優しい浩市の母美沙さんだ。
光流は浩市の部屋には向かわずリビングのソファーに腰かける。
「浩市から相談したい事があるって言われて来たのですがその前にお母さんに聞いておきたい事があります。」
「ちょっと待ってね。コーヒーを入れるわ。あの子最近落ち込んでいるんだけれど私には何も話してくれないの。」
カップを置く時の胸の谷間に、ソファーに腰かける時ムッチリした太ももにそれとなく視線を送る。
「やっぱりそうですか。僕に話す時も暗い顔で『相談したい事があるんで放課後うちに来てくれないか?お前しか頼れる奴はいないんだ。』と言うんですよ。お母さんに聞けば何か判るかと思ったのですがよほど重大な事のようですね。」
「植山君だけが頼りだわ。私も夫も何があっても浩市の味方だって事も伝えてね。」
浩市の部屋へ入る。
「おう、待ってたよ。」
と言ったきり学校の先公の悪口と可愛い女の子の話に終始して相談話を切り出せない。
「相談が無いのならゲームやろうぜ。」
急かされるように重い口を開く。
「実は凪咲を妊娠させてしまったんだ。それで緊急に金が要るんだ。」
凪咲は浩市の彼女で同じ高校一年生だ。
「親に相談すりゃいいじゃないか。」
「光流が僕の立場だったら親に相談するか?」
「別の口実考えて金だけ出して貰えばいいじゃないか。お母さんも断らないと思うよ。」
「そのいい口実が無いんだ。1万2万なら何とかなるけどね。それで闇バイトに応募したんだ。日当10万円くれるんだがそれじゃ足りないんだ。闇バイト一人で行くのも怖いし光流も一緒に行ってくれないかな?と思って・・・・・。」
「・・・それで・・・20万円で足りるのか?」
「それだけあれば充分だ。やってくれるか?」
当日、光流はかけこ、浩市はだしことしてバイトを済ます。
光流は帰宅してすぐに携帯の番号を変える。
闇サイトに出した住所も名前も別人のものだからこれで縁が切れるはずだ。
しかし闇サイトから新しい電話番号に電話が入る。
「もう一度来て欲しいんだ。自宅の住所も判っているから断れないよな。」
教えたのは浩市の他には考えられない。
が、その浩市はずっと学校に来てないのだ。
3日目、浩市の自宅へ向かう。
「あら、植山君いい所に来て呉れたわ。浩市バイトで3日間帰って来てないのよ。電話しても携帯に出ないのよ。」
「僕も再三電話しているんだが出てくれないんだ。多分それどころじゃないと思うんだ。」
そんな時光流の携帯が震えた。浩市からだ。
「どうして僕の電話番号と住所教えたんだよ。」
「君と違って僕はあの日、原チャリで行っただろ。それで免許証取り上げられて現住所を知られたんだ。君の事教えろと家まで来られたんだ。家族に危害を加えられない為に教えるしかなかったんだ。ごめんよ。今回の仕事も今日で終わりだから今夜家に来てくれ。」
「お母さん、大丈夫です。浩市の奴今夜帰ってきますよ。夜に来いと言うんですけどこのままここに滞在させて頂けませんか?」
「いいわよ。主人も出張で帰ってこないから夕飯も食べて泊って行けばいいわ。あの子何時頃に帰ってくるのかしらね?」
「だいたい仕事が終わるのは夜10時。それから報告や打ち合わせがあるから帰宅するのは12時は回ると思います。」
「植山君、どうしてそんなこと知ってるの?あの子どんなバイトをしているの?」
「僕も一度だけ浩市に誘われて一緒に仕事した事があるんです。」
夕食を済ませ僕は浩市の部屋に入りお母さんは風呂場へ向かった。
その時再び浩市から連絡が入る。メールだ。
「別口の京都の仕事に欠員が出来て帰れなくなった。もし断れば母に危害を加えると言うんで断れないんだ。」
ダッシュで風呂場のドアーを開く。
「キャッ、見ないで。」
無視してまくしたてる。
「お母さん浩市が大変なんです。」
と言いながら視線は全裸のお母さんから離さない。
しばらくしてリビングのソファーで向かい合う。
「お母さん、浩市は今日も帰れなくなったらしいです。帰らせてくれないのです。」
「それってどんなバイトなのよ?」
「もうお母さんに隠しておく事は出来ません。全部お話します。そもそもは浩市が凪咲を孕ませた事か間違いのスタートです。」
闇バイトの事を話し、お母さんを守るために抜け出せない状況も話す。