『beat mania UDX』より不夜城の仲間たち〜外人二人とイロハと理々奈-5
そっと扉に耳を当てると、やはり中からは先程の怪人たちの話し声が聞こえてくる。
(もしや……アジト!?)
激しい勘違いをしながらも、彩葉は大きく深呼吸をすると、バーの中へと入っていった。
中は、黒と青を基調としたシックなデザインで造られていた。
彩葉は奥のカウンターへと向かうと、ある人物に目をとめた。
先程追っかけていた怪人二人組はいなかったのだが、自分と同じ高校の女の子を見付けたのだ。
背中まである艶やかな黒髪、前髪は目の上辺りで切り揃えられ、どこか神秘的雰囲気もあいまって日本人形の様な美しさを出している。
(あの子、今年からクラスが一緒になった……)
彩葉が女の子を見ていると、気配に気付いたのか女の子も彩葉の方へと目を向けた。
女の子は驚いた顔をそのままに、こちらへと駆け寄ってきた。
『あなた……彩葉…ちゃん』
「こんばんは、理々奈ちゃん」
理々奈(りりな)、それがこの女の子の名前だ。
「理々奈ちゃんは、なんでこんなところに?」
『ここは兄さんがやってるお店だから……お手伝い。彩葉ちゃんこそなんでここに?』
「いや、それが……」
彩葉はことの次第を話すと、理々奈の変化に気付いた。
理々奈は顔を綻(ほころ)ばせて笑っていたのだ。
彩葉は学校で理々奈の笑顔を見たことが無かった。
まだクラス変えを行ってから少ししか経っていないが、機関銃の様に友達と話す彩葉とは対照的に、理々奈は一人で過ごしていることが多く、その彼女の笑顔を見られたことがすごく新鮮に思えた。
『フフ…ごめんね、笑っちゃって』
「別に平気だよ!」
『あの二人なら……私の知ってるゲームセンターに来るわ』
「本当!?」
『うん…後で一緒に行く?』
「行く!……っていうかその二人組は?」
『お兄ちゃんが追い出しちゃった』
「えぇ!?」
彩葉はまだ外に警官たちがうろついていたのを思い出した。
だが彩葉は話のネタよりも、新たな友達が出来たことが嬉しかった。
二人はひとしきり喋り終えると、時間が大分経っていたことに気付き、帰ることにした。