後輩は私のもの@-1
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年明け。
三十一日から、年明けにかけて、加奈子と息子の柚木は実家で過ごしたのだったが、二日になって、加奈子のみ自宅に帰ってきた。
昨夜は、加奈子の父の妹の息子ーーつまり、加奈子のいとこの亨も、加奈子の実家に泊まっていた。
加奈子の実家は、亨の母親の実家でもある。
亨が気を使って、「加奈ちゃんは家でゆっくりしてなよ。俺、柚木と遊ぶし」と言ってくれたのだった。
二日の昼頃。
シン、と静まり返る一人の家で、黒の上下のスエットに着替えた加奈子はスマートフォンを触りながら、ホットコーヒーを飲んでいた。
リビングのローテーブルで、肘を付きながら何となくスマートフォンを眺めていると、着信があった。
ーー加奈子の会社の、本社に勤める本間佳織だった。
「えっ、どうしたんだろう」
驚きながら、スマートフォンを耳元に当てる。
「お疲れ様です。明けましておめでとうございます」
普段、通話などをすることはない。
ただ、昨年の出張時に連絡先を交換していたのだった。
「明けましておめでとうございます。今、お時間大丈夫だった?」
「はい。息子は実家に泊まってて、あたしは自宅に一人です」
「そう。本当はもっと早く連絡しなきゃと思ってたんだけど。先月、夜中に、その……あなたといるときに佐藤くんと電話してしまって、きっと嫌な思いさせただろうから……。佐藤くん、焦って電話切ってたし。言うことも烏滸がましいかもしれないんだけど、ごめんなさい」
急に言われて、どきん、と胸が高鳴る。
「全然何も思ってないって言うと嘘になる、とは言っておきます」
加奈子は申し訳なさそうに、だが正直に佳織に伝えた。
三人での饗宴を経ているからこそ、加奈子は正直な気持ちを伝えたのだ。
「そういう気持ち、わかりますよ。あたしといるはずなのに、佐藤くんからこっそり電話かかってきたら、嬉しいですよね」
「ごめんなさい。謝りたくて」
「ふふ。ずるいなぁ、本間さん。分かってるのに、佐藤くんのこと煽るようなことするんだから」
少し嫌味を込めて、加奈子は笑いながら言った。そしてさらに佳織を挑発するようなことを言う。
「すっごく、佐藤くんの体熱かったです。聞いちゃいました。佐藤くんのこと、本間さんが想像して……何したかまで」
ひどいことを言いながら、ぞわぞわと、気持ちが沸き立つ。
自分がこんなにも理央に対する独占欲が強く、さらには加虐心が強かったのかと思わせられる。
理央に対する気持ちが強く、嫉妬すると言うよりはーーやはり、理央のすべてを知りたい方が勝るらしい。
一般的な独占欲とは異なるのだ、と改めて思った。
「ーー本間さん、今お部屋に一人ですか?」
「う、うん……寝室にいて……。息子は彼女と一緒に出かけてるみたい……」
「じゃあ、意地悪……してもいいですか?あたし、前に言いましたよね。佐藤くんのこと、知りたいって。だからーー本間さんがどうやって、佐藤くんのこと煽ったのかも知りたい」
佳織が有する罪悪感に漬け込んで、加奈子は言い放つ。