第二十八章 別れ-1
第二十八章 別れ
「いけっー・・・アキオッー・・・」
「うおおおおぉー・・・・」
そらちゃんを肩に担ぎながら、秋生が突進していく。
浅い波が残る砂浜を、2つのシルエットが疾走していた。
「負けないでっ・・・剛さんっ・・・」
「まかせろっ・・・さくらっ・・・」
すっかり明るくなった新藤さん夫妻が、無邪気に叫んでいる。
桜さんを肩に担ぎ、秋生達と競争しながら走っている。
四人は幼子のように笑いや歓声を上げていた。
僕は腕の中に映見を包むように抱きながら、楽しく見つめていた。
「フフッ・・・」
映見がクスリと笑った。
「そらさん・・・アキ君・・・・」
なぞるように名前を呟いている。
「剛さん・・・桜さん・・・・」
僕はその声を心地良く聞いていた。
男達への呼び名が親しみを帯びたものになっていることも、嬉しく感じた。
映見を、妻を共有した歓びだ。
「みんな・・・大好き・・・」
映見も僕に抱かれた女達を、不思議な気持ちで見つめていることだろう。
僕達夫婦はスワッピングを通して、かけがえのない友人を得たのだ。
それこそ、心身ともに共有した友なのだ。
「でも・・・裕君が一番好き」
嬉しそうに見上げる妻が愛おしくて、僕はキスしたくなった。
映見も同じだったのか、両目を閉じ少しあごを上げた。
二人の顔が近づいた時、かおりさんの声が聞こえた。