HAPPY LIFEF-1
「あ、おはようございます」
「おはよう。ちょっと話したいことあるんだけど、いい?」
話したいことって…。
すぐ近くにある公園に入る先輩のうしろについて行った。そこは小さな公園で、真ん中に噴水があってそのまわりを囲むようにベンチが並べられている。
「明日香ちゃんに頼みたいことがあるんだ」
「私に、ですか?」
先輩は頷いた。
「実はさ…」
ベンチに座りながら先輩は話し出した。
先輩は今付き合ってる人がいて、でもその人と別れようとしていること。昨日別れ話をしたけど、納得してもらえなかったこと。そして…橘明日香のことが好きだからという口実で彼女を説得したいと思っていること。そのために協力してもらいたいということ。
「嘘…つくんですか?」
複雑だった。
「そうでもしないと、別れてくれないからね」
「正直に言えばいいじゃないですか。本当の気持ち」
先輩がどうして別れたいのか分からないけど、嘘ついてまでそうしたいって思うくらいなんだから、きっと何かあるんだと思った。
「俺さ、来月からイギリスに行くことになったんだ。もともと親父が仕事であっち行ったりこっち来たりしてて、今度向こうで本腰いれてやることになってさ。イギリスに引っ越しなんて、いまだに信じられないけど」
「…どうして本当のこと言わないんですか?」
「日本にはしばらく戻って来られないから。10年、20年先になるかもしれないし…もしかしたら二度と来ないかもしれない。それなのに俺のこと好きでいてくれなんて言えないよ。真由を迎えに来るって約束できるほど大人でもない」
先輩の彼女に対する想いがすごく伝わってきた。あんな風に自分を思ってくれる人がいるって、どんな感じなんだろう。私も先輩みたいに真剣に恋をしたいと思った。たとえどんな結果が待っているとしても。
その日の夕方、先輩の彼女さんに会った。静かに先輩の話を聞いていた。
「…わかった。そうゆうことならしかたないよね」
そう言ったあと、私達の前から去って行った。痛々しい笑顔だった。
お互い好き同士なのに分かれなきゃいけないなんて…神様ヒドいよ。
次の日〜
「…橘さん?」
学校に向かう途中突然名前を呼ばれた。昨日と同じパターン使うなんて、ラクしやがったな作者め…。
今度は誰?
「あ…」
「橘さんだよね?」
先輩の彼女さんだ。昨日の今日でかなり気まずい。
「昨日はごめんね。変なことに巻き込んで」
…?
「私全部知ってるの。アイツがイギリス行くことも、もう戻って来られないことも」
「えっ…」
「だから、気にしないでね。何もなにのにあなたと気まずくなるのは嫌だから。そうゆうこと考えてないんだよね、アイツ」
知ってたんだ…。