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証拠が消去される頃
【レイプ 官能小説】

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アタシの沈黙-2


 「せんぱい、せんぱーい……」
 可愛い女の子の声で、アタシは忌まわしい回想から抜け出した。

 アタシがいるのは同じ住宅に住む後輩のひゞかの家のリビング。
 そしてアタシに声をかけてくれたのは、ひゞかの娘で年少さんのリリンちゃんだった。

 「せんぱい……」ひゞかがずっとそう呼んでいるから、リリンちゃんもアタシをそう呼ぶようになってる。「そんなシンコクなカオしてないで、イッポンいきましょう。」
 リリンちゃんはそう言うとアタシの唇にタバコの茶色いフィルターをやさしくさし入れた。そして金属の小さな箱を手にすると、その箱から細い棒をつまみ出して箱の側面を擦った。
 棒の先っぽに火が灯った。リリンちゃんはその火をアタシがくわえるタバコに寄せた。
 アタシの唇から煙がこぼれたのを見ると、リリンちゃんはその棒を箱の中におさめた。
 (ははーん、『メタルマッチ』と言うやつやな……)と思ったところに、
 「リリンっ!」ひゞかの怒鳴る声がした。「それ、火事になるからオモチャにしたらアカン言うとるやろ!」

 「オモチャにしてないもん!」リリンちゃんが言った。「せんぱいに火をつけてあげたんだもん!」
 「何言いよるねん、」ひゞかがアタシのとなりに座った。「それで火つけるんは、ママがそばにおる時だけにして、って言うとったやろ!」

 リリンちゃんはアタシで身を隠すように寄りかかった。「あー、もー……」ひゞかもアタシの隣に座った。「あの野郎(=夫)、リリンにこんなもんの使い方教えて『タバコ火付け役』なんて変な係にさせよって……」
 「あ、そうなんや……」アタシが言うと、ひゞかはアタシの耳に唇を寄せた。

 「先輩、なんか心配なことあるんですか?」
 「え……」アタシは驚いた。「なんで?」
 「先輩いっつも、リリンの身体に悪いからってウチの中ではタバコ吸わへんやないですか。」
 「あ……」タバコをくわえっぱなしだったアタシは、ひゞかの家でのいつもの自分の姿を思いだした。
 「いや、リリンが火をつけたから、別にええねんけどね。でも……」ひゞかはアタシの胸に軽く手を当てた。「なんか不安なことがあるんやったら、言うてくださいね。」

 アタシは反対側の胸にも触れてくるものを感じた。
 見るとリリンちゃんが、アタシに寄りかかるとアタシの唇からタバコを抜いて、灰皿に押しあてた。
 そして新しいタバコを唇に挿すと、メタルマッチを擦って火をつけた。
 「ママが見てるところだから、イイんでしょ?」
 アタシは笑った。(さすがにリリンちゃん、ひゞかの娘やわ。)

 でも、アタシはひゞかに言うことが完全にできなくなった。
 (アタシ『あの野郎』に強姦されたんや)
 だけど、アタシは今ひゞかから話を聞いて、あの野郎がくわえたタバコに火をつけてあげるリリンちゃんの姿を思いうかべてしまった。
 その父と娘を裂いてしまうことになりかねないほど、ひゞかを激怒させるであろう「あの野郎の犯行」を、アタシはひゞかに伝えることができなかった。

 
 
 


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