one-sided love*painful-4
「チユ…その子達、誰?」
形のよい唇から放たれる、意外性No.1の、ハスキーボイス。
って、おいおい。ちょい待ち。それは…、その口調はいかにも…かの「もしかして…チユ君の彼女さん?!」
結莉芳が、大袈裟に口に手をあてて聞く。
待って!ちょっと…ヤダ…。
慌てて、話を逸らす。
「え…あ、結莉…。ホラ、行かなきゃ…。」
グイグイと腕を引っ張っても、肩を揺らしても、好奇心旺盛な乙女に勝てるはずもなく…
「こんな美人さんだなんて…さすがチユ君!やっる〜!」
ちょっ…ヤダ…やめてよ結莉…もし…もし、だよ?
モシ、カノジョダッタラ…?
そうだとしたら、心の準備が出来てない。バクバクいって、止まらない。
ふ…と、チユ兄がアタシを見た。
悔しそうな…それでいて、哀しそうな、泣きそうな目……。
前飼ってた犬が死んだ時も、あんな目してたな…。
その後は1週間くらい無言で、部屋に閉じこもってたけど…。
って、話がちょっとずれたな…。
ねぇ、兄やん。アタシ…そんなに、顔に出てる…?
これでも必死に、我慢してるんだけどね。でも…これはキツいよ…神様。
アタシの心臓の音のように、周りもどんどん騒がしくなる。
人の波に流されそうになるのを、必死に堪える。
「チユル…私、聞いてるんだけどな。この子達、誰なの?」
明らかに、嫉妬してる。分かる。
そんな女の人の様子を見て、堪忍したかのように兄やんは言った。
「…これは、友達…と、………妹。」
『妹』
「妹?似てないのね。」
途端に、安堵の笑みを浮かべる女の人。
「「こんにちは。」」
同時に挨拶。握り締めた手が、汗で濡れてる。
「…どっちが妹さん?こんにちは。私…」
チラッと、兄やんを見る。
兄やんも、その人を見ている。
そして………
「私、芦田 ヒナです。チユル君と、お付き合いさせてもらってます。」
……一瞬、ざわめきが聞こえなくなった。
時間が止まったみたいに…兄やんは、下を向いて動かない。
お付き合い…してるんだ…。
そんな事、兄やん一言も言ってくれなかった…。
知らないよ…?