第三十六章 盗み見(画像付)-1
第七部 処女喪失
第三十六章 盗み見
「マ・・マ・・・」
もう一度目を覚ました時、母はいなかった。
「うぅ・・ん・・・」
軽く、のびをした。
時計を見ると、もう十一時を指している。
ノロノロした動きで着替えをすませ、階段を下りていった。
家の中には誰もいないのか、シーンと静まりかえっている。
ダイニングのテーブルに書置きがあった。
『出かけてきます。今日は日舞の発表があるので遅くなりますが、夕方には帰ります』
「ママ・・・」
小さく呟くと、遠い目をしてたたずんでいた。
眩しい夏の日差しが窓から差し込んでいる。
用意されている食事の支度も手をつける気がしない圭子は、自分の部屋に戻った。
ベッドに倒れ込むように身体を投げ出した。
急に苛立ちがこみ上げてきた。
「ウッー・・・」
シーツに顔を埋め、呻くように声を出している。
(あの人に、会いにいったのね・・・)
「嫌いっ・・・」
少女が叫んだ。
「大嫌いっ・・・」
それは男に向かって言ったものか、母に対してのものか、よく分からなかった。
顔を上げると、涙で滲んだ目がキラキラと光っていた。
「ママァ・・・」
切なく声を絞り出す圭子は、未だに気持ちの整理がつかないまま途方にくれていた。