麻由の願い-1
週の半ばで、麻由からメールが届く。
「こちらは何事もなく楽しんでます。予定通り金曜夜に空港に着きます。で、こないだの返事だけど、私が断ったら橘さんが困りますか?
それならやりますので。あとお店のほうは喜んで戻らせてもらいます。ありがとうございます」
引き受ける、と言われ困惑した。
果たして、、男たちにこのままを伝えてよいものか。
啓介としては複雑だ。
とりあえず啓介は、麻由の帰りを待つことにした。
「こんばんは、、お疲れ様です」
金曜夜、二十三時前になり麻由は帰ってきた。
「お帰り。疲れたんじゃない?明日でもよかったのに・・・どうだった?」
手荷物からして、空港からそのまま来たらしい。
「結構大変でした。私、体力ないほうですから。まあ付き合いというか、仕方ないかなと・・・あ、これお土産です」
彼女の口からは「楽しかった」という言葉は出てこなかった。こういうところがドライである。
「で、、オーナー、この間の話ですけど、、」
麻由から切り出してくれたので助かる、
「どうして『二回目』なんて話が出たんですか?」
「いや、そんな深い事情はないよ。君がそれだけ気に入られたのさ」
その回答に複雑そうに苦笑いを浮かべるが、この前までのような深刻さは何故か無い。
「で、どうなんです?私が断ったらオーナーが困りますか?」
その質問のほうが余程、啓介を困らせた。
啓介は、麻由と問答を重ねた。
断ったとして自分の立場が深刻になるというほどのことは無い、ということ、
あるとすれば界隈の自治会などで多少気まずい程度だということ、
麻由がまた抱かれることそのものについて、どう思っているのか?
と尋ねられたので、
「複雑だ」
と答えたら、
「『複雑』じゃよくわからないです」
と追及された。
「麻由が、、あ、いや麻由ちゃんがヤラれてるのを見るのはいい気持ちはしない。けど正直、興奮するのは事実だ」
別の意味で顔を赤くする麻由だが、
「わかりました。いいですよ、やっても」
と言う。でも、、、と何か言いかけたので、
「でも、、なんだい?」
「『ヤラれる』はやめてください。まるで犯されるみたいです」
と少しふくれた顔で言う。
「じゃあ、、、私が『ヤラれる』日が決まったら教えてください」
軽口を残して麻由は帰っていった。
また麻由が、、、犯される。
麻由が承諾した旨を伝えると、即座に日取りと面子が決まった。
一週間後の土曜だ。
仕事終わりにそのことを麻由に話した。
「わかった。空けておきます」
、、、と意外なまでにサバサバした返事だ。
「ん?何か聞いておくことあれば聞いておくけど?」
「聞いておくことって?」
こないだの惨劇を思うに・・・不安はないのだろうか?
そのように麻由に尋ねてみると、
「こないだと同じようなことをするんじゃないんですか?」
逆に尋ねられた。
「それは、こないだと同じ内容のことはされても構わない、という意味?」
少し怪訝な顔になり、
「何か、、、嫌な言い方ですね。逆にオーナーが何かNGでもあるんですか?」
見透かされいるようで、時々麻由が怖く感じることがある。
「いや、、、そんなのはないけど、でもさらに酷いことされたら・・・」
麻由は私に顔を寄せ、
「あれ以上なんてあるんです?もしかして・・・心配してくれてます?」
そして麻由が改まって話し出す、
「大丈夫です、免疫は出来てるって話はしましたよね」
そういうと、、、急に背中を向けて、
「なら、、、当日までにひとつお願いしていいですか?」
いつもはクールな感じの麻由が珍しい。
「な、なに?」
尋ねても恥ずかしいのか、なかなか言わない。
「私、、、『望まぬ相手』としかしたことがないので・・・」
麻由にしては・・・歯切れが悪い。
「だから、その日までに『望む相手とのSEX』をしてから、、、にしたいです」
もう麻由は、私の目を見れずにいた。
「それは、、、僕でいいの?」
よく意味が判らなかったので、そのままを聞いたが、
「・・・ふつう、そんなこと聞きます?」
こんな麻由は、、、初めて見た。