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幸せは君
【二次創作 恋愛小説】

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幸せは君-2

あの後、もう一本DVDを観た。昼ご飯も忘れて、俺たちは没頭していた。観終わった頃には、もう日も傾きかけていたので、昼は食べないで夕食を早めにとることにする。幸い、あまり腹も減っていない。
「流、ユキの散歩に行こう!!早く早く。ユキも行きたいよねー」
そう言いながら、鈴子はユキを抱き上げ、頬を寄せた。ユキは「行く行く!」とでも言ってるかのように勢い良く尻尾を振り、鈴子の顔を舐めた。
「じゃあ行くか」
俺はソファから腰を上げ、ユキを受け取る。
そして、ジャケットにくるみ外へ出る。くるむ理由は、大家さんにバレないようにするため。隠さないよりはマシだということで、ユキを連れて外へ行く時は、このように服にくるんでいる。そして、アパートから少し離れたところで、ユキを下ろしリードを繋いで、鈴子とゆっくりアパートの周りを歩く。
楽しそうに歩く鈴子とユキを見て、俺はユキを飼い始めた時のことを思い出していた。


知り合いが、子犬が生まれたから貰ってくれと言ってきた。しかし、俺たちはペット禁止のアパート暮らし。一度断ったのだが、どうしてもと言うので、見るだけ見てみようということになった。
結局、次の日の夜には、既に『ユキ』と呼ばれる小さな真っ白いチワワが家族となっていたのだが。
しかし、どうしたものか…。夜、俺たちが寝ているとユキは相当暇になるらしく「くぅーん」と鳴くのだった。それならまだしも、挙げ句の果てにはキャンキャン吠えだす。その度に起きては軽く遊んでやり、また寝ては吠えられるの繰り返し。
よって、次の日は躾トレーニングに決定。朝から晩まで、そう、本当に日が昇ってから沈むまで、俺たちはユキと向かい合い、餌を片手に猛トレーニングした。もともと、ユキは頭がいいのか、部屋がオレンジ色に染まる頃には、俺たちが寝たフリをしても「くぅ…ん」とは鳴くものの吠えることは無くなっていた。


「流?ボーっとしちゃって。どうかした?はい、ユキ」
「いや、何でもないよ」
俺はまたユキを受け取り、ジャケットに隠した。もう家に着くところらしい。人目を気にしながら、さっと部屋の鍵を開け中に入り、ユキを床の上に下ろす。すると、ユキは一目散にベッドへ掛けていき、小さく丸まったかと思うと、すやすやと寝息を立て始めた。
「流も寝たら?疲れてるでしょ。その間に、私、夕飯作っちゃうから」
鈴子はにこにこしながら、台所に立つ。その背中に向かって「ありがとう」と言いながら、ベッドに寝転がり、ユキの耳を撫でた。滑らかな体毛が指に心地よく、俺はどんどん微睡みの中へ引き込まれていった。


部屋中に広がる食欲をそそる香りで目が覚めた。
「カレー…」
つい口に出てしまう。
「ピンポーン。グッドタイミングね。今出来たところだよ」
体を起こしてテーブルの上を見ると、カレーライスが二つ向かい合って並んでいた。ユキはというと、ドッグフードをおいしそうに食べている最中だった。
急に空腹感が俺を襲う。と、同時に「食べよう?」という鈴子の声。
俺は迷いなく頷くと、鈴子と向かい合って鈴子特製甘口ビーフカレーを頬張った。




「と、まぁ鈴子とはこんな感じかなぁ。毎日楽しく過ごしてるよ」
大学時代の友達に話してやった、俺たちの何でもない普通の日常。
「ふっつうだなぁ〜」
だって普通の日常だし、と心の中で呟く。
「普通過ぎて面白くもなんともねぇや。まっ、末長くお幸せに」
友達は憎まれ口を叩き、ニヤニヤ笑いながら、先に喫茶店を出ていってしまった。久しぶりに会ったのに、共有した時間は随分と短かいものだった。まぁ、さっきメールが来ていたようだし、大方用事でも出来たのだろう。
そんなことを考えながら、俺は鈴子の待つアパートへと続く道を歩いていた。


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