イノチ-1
むかしむかし、ある村に、一組の少年と少女がいました。
二人は恋人同士で、村の誰もが二人の仲を認めていました。
しかしある時、少年は病気にかかり死んでしまいました。
少女はとても悲しみました。少年のいない生活など、彼女には考えられなかったのです。
少年が亡くなってからしばらく経ったある日、少女は少年の墓の前で自分の首をナイフで切りました。
流れ落ちていく血。
首に走る灼熱の痛み。
そして、彼に会えるという喜び。
少女はその場に倒れ込むと、まどろみの中に落ちていきました。
少女は目を覚ましました。
不思議と、体に傷はありませんでした。
少女は辺りを見回しました。
周りにあるのは草木ひとつも生えていない枯れた大地と、全てを呑み込むかの様な漆黒の空だけ。
少女は歩きました。
ただひたすらに歩きました。
少女の胸には希望が詰まっていました。
また彼に会える。
また彼と一緒に過ごすことが出来る。
少女は歩きました。
ただひたすらに歩きました。
靴は壊れて裸足になり、その足からは血が流れていきます。
少女はあまりの痛みに歩みを止め、顔を歪めました。
しかし、少女はまた歩き始めました。
しばらく歩くと、一人の老婆が少女の前に現れました。
老婆はしわくちゃになった顔で少女に語りかけました。
お前はもう彼には会えない
少女は老婆になぜ、と問いました。
老婆はからからと乾いた笑いをあげながら答えました。