イノチ-3
まだ早い。
まだお前は生きられる。
最期まで、生き抜きなさい。
目が覚めると、少女は少年の墓の前に立っていました。
首に傷跡もなく、ナイフも持っていませんでした。
少女は、少年のいない世界を必死に生き抜きました。
少女は生涯、独り身を貫きました。
やがて少女は緩やかに、しかし確実に老いていきました。
彼女は、村のみんなに看取られながらその生涯を終えました。
彼女はこの世界に満足していました。
例え愛する人がいなくとも、仲間たちが、楽しい出来事が、彼女に生きるチカラをくれたのです。
彼女はゆっくりと、生命の瞳を閉じました。
少女が目覚めると、そこは見覚えのある場所でした。
昔、自分がまだ幼かった頃、命の素晴らしさを知らなかった頃に來たことがありました。
少女は、自分の身体が昔の頃に戻っていることに気付きました。
目の前には枯れた大地と漆黒の空。
しかし、あの時とは一つなにかが違いました。
目の前には、彼がいました。
少女は驚きませんでした。
彼女は信じていたのです。
少女は少年の横に並ぶと、お互いに手を繋ぎました。
二人は歩き始めました。
何もないこの世界をひたすらに歩き始めました。
しかし、少女はとても幸せでした。
何故なら隣には彼がいるから。