イノチ-2
あの男は寿命で死んだ。お前は自ら命を絶った。
自ら命を絶つことは、自然の摂理に反した重罪だ。
自ら命を絶った者は、『時』が来るまでひたすら何もないこの地を歩き続けなければならない。
老婆は答え終わると、目の前から消えました。
少女は歩き続けました。
身体が勝手に歩くのです。
足は肉が削げ落ち、骨が削れていきました。
歩くたびに走る激痛、しかし少女は歩みを止められません。
やがて骨は全て削れ、少女の体から足首より先がなくなりました。
少女はそれでも歩きました。
棒のようになった脚を、少しずつ前に出していきます。
やがて、少女の膝から下がなくなりました。
少女は身体の安定がとれなくなり、前のめりに倒れました。
少女は腕を使って必死に前へと這いました。
ただひたすらに這いました。
腕が削れ、血が地面を濡らします。
しかし、それでも少女は這いました。
今ここで進むのをやめたら、彼に会えないことを認めてしまうのです。
少女は這いました
血を流しながら
涙を流しながら
鼻水を流しながら
会いたいと叫びながら
どれほどの時間を進んだのでしょう、少女はまた老婆と出会いました。
老婆は少女に問いました。
彼に会いたいか?
少女は頷きました。
すると、目の前に黒い穴が現れました。
老婆は少女を抱き上げると、一緒に穴の中へと入っていきました。
何も見えない暗闇。
自分を抱いてくれている老婆も見えません。
少女の耳に、老婆の声が聞こえました。