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流星の雨粒
【片思い 恋愛小説】

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流星の雨粒-3

「……らしくないよ、そんなセリフ」
「素直に受け取れって。こんなこと、普段だったらぜってぇ言わねぇし。……つか、おまえ、なんでここに居んの?こんな雨の中」
 柚希がずっとここに居たことに、今更気がつく敦。

(あんたを想っていたんだよ!)
 柚希は心の中で叫ぶ。声に出せるわけがない。

「さては、おまえもふられたか?」
 あてずっぽうで言う敦にギクリとした。
「その顔は図星かぁ??誰だよ?相手は?」
 返事に困っている柚希をよそに、敦の妄想は膨らんでいく。
「もしかして、あのバイト先の店長か?それとも、理科のセンコーか?それとも…」
「あー!!うるさい!誰がそうだと言ったよ!雨宿りだよ、あ・ま・や・ど・り!」
 敦の暴走を止めために柚希は大声で叫んだ。


(もし、告白をしたら?敦が好きなんだ、と言ったらどんな顔をするのかな)
 チラリと敦を見る。その横顔にドキッと胸が高鳴った。
(敦って、こんなにかっこよかったっけ?)
 毎日見ていたはずの敦の顔。今日はちょっぴり大人びて見えた。それはきっと失恋のせい。物悲しそうなその瞳は、まだ裕香に未練があるように見えた。

(…絶対、ふられる!私が裕香に勝てるわけがない。敦と気まずくなるし、きっと友達でもいられなくなる…)
 ブンブンと頭を横に振った。
(そんなのイヤだ!)


 太陽が顔を出した。
 雨粒を照らす光が急に明るくなり、いっそう輝きを増して地に落ちていく。

(ずっと、このままでいたい。このまま、敦に彼女ができないでいて)
 こっそり、雨粒に祈ってみる。それは、儚い夢なのかもしれない。
 経験は人を成長させ、人格を作っていく。そうやって大人になっていくのだ。

「……敦」
「……なんだよ?」
「今、雨粒に願い事をしてたでしょ?彼女ができますように、て」
「??!!」
 がばっと体を離し、驚いた表情で柚希を見た。どうやら図星だったらしい。


 厚い雲が流れ、青空が広がっていく。
 雨は急に弱くなって、かわりに太陽の光が公園の隅々まで行き渡る。すると息をひそめていた草木たちは、いっせいに雨で濡れた葉っぱたちをキラキラ輝かせはじめた。
 雨粒たちも、いっそう美しさを増し、次々と地に落ちていく。


「よし!アイス買いに行こうか!」
 柚希は立ち上がりながら、できるだけ明るい声で元気いっぱいに言った。
「おう!行こうぜ!」
 待っていました、とばかりに敦も立ち上がる。
「ハーベンダッツな!」
「バリバリくんだ!」
「えぇ!!雪目だいふくじゃねぇのかよ?」
 
 それぞれの想いを抱き、ふたりは走り出す。誰もいなくなったベンチでは、まばらになった雨粒がまだ屋根から落ちていた。


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