我以外皆師成−2-2
古新聞をお借りして敷き布団と掛け布団にするため隅に広げて包まって横になった。
雑誌は枕代わりにした。
固い枕だなぁとぼやきながらも眠りの場所が確保できた喜びからすぐに眠りについてしまった。
寝る前にセットしたケータイの目覚ましアラームの時刻は
AM4:00。
夢は見なかった。
疲れと寒さから半睡状態でボンヤリとしていた。
朝は日が昇るのが見たい。そしてそれを見たら下山しようと決めていた。
3時になってブルブルとケータイが振動した。
緊張からかすっと目を覚ますことができた。
急造りの枕と布団を元あった場所にたたみ、おれは倉庫をそっと後にした。
まだ暗い。
そして誰もいない。
静まり返ったこの世界のてっぺんにはおれしか存在しないんじゃないかと思うくらいの静寂だった。
もしも世界に誰もいなくなったら。
最初平和だと思った。
争いも混乱も受験も奪い合いもないから。
でもその分喜びも一人ぼっちだ。
繋ぐ手もないのは悲しい。
少し淋しさを感じながら日の出を待った。
少しずつ夜がかけた黒いシートがめくれてきてボンヤリと明るくなりだした。
ゆっくり力強く。
眼下からまだ弱々しい太陽が急に顔をのぞかせた。
急に世界に光を放ってそれは今まで見たことがないような輝かしいものだった。
自分の今までの迷いや葛藤もいつかこんな風に拭い去れたらいいのに。
いや、これがいい兆しになるはずだ。
太陽は力強く昇り始める。雲はそれに呼応するように美しく照らしだされた。
誰のために朝はやってくるんだろう?
どうしてこんなにも美しいのだろう?
生きているってこんなにも美しく力強いんだ。
と思うと自然に目から熱い液体が落ちた。
いままでくすぶっていたモノがサラサラと流れていくような感覚。
何となく毎日を過ごしてきた。
当たり前の毎日とカレンダー。
でも当たり前じゃなかった!
スゴいことなんだ朝が来ることは。
自分がちっぽけに感じた。悩みもいままで作ってきた壁もすべて。
これを目に焼き付けよう。
ん〜と息を吸い込み吐き出した。
スッキリした。
これで下山をしよう。
この気持ちで。
降りる前に信号さんにメッセージを送る。
返事はすぐ来なかった。
朝返事を返せるほうがありえないかと思い、朝日を背中に山を下っていった。
威風堂々。
てっぺんでおれの何かが弾けた。
それは子供じみていた殻なのか、今までの生活なのかはわからなかった。
戻ろう現実に。
闘おう。
もう逃げはしないから。
おれは朝の涼しい風に吹かれながら山を後にした。