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陽炎
【ガールズ 恋愛小説】

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陽炎-5

これから八木の家で彼女と勉強するらしい。
受験生だもんね。
"襲うなよ"って言うと"約束しかねます!"って八木と彼女は笑った。
すると八木が急に真面目な顔して聞いてきた。

「…お前、どーした?」

「何が?」

「顔」

「……はぁ?ぶさいくってか?!」

「全然笑えてねぇ」

八木の射をつく言葉に返す言葉が見つからない。

夏の風が木々をザァっと揺らす。


額から汗が滴り落ちる。

「分かるー?夏バテでさ〜まいったよ」

できるだけ明るく振る舞った。でも内心穏やかじゃなかった。

じりじりと太陽が照りつける。

八木の視線が突き刺さる。

これ以上私を照らさないで。

かき乱さないで。


「それならいいけど、新学期までには治せよ」

「了解」

「じゃぁ、行くわ」

「うん、またね」

彼女がぺこっと頭を下げたから私も軽く会釈をした。
ペダルをこぎ始めようとしたとき八木が思い出したように振り返り言った。

「雪乃!最近春人と連絡とってる?」

鼓動が早くなったのが分かった。

「たまに……何で?」

今、一体どんな顔をしているだろう?
冷静を装うのでいっぱいいっぱいで言葉がうまくでない。

「あいつさ、最近他にいるみたいなんだ」

「……他に…って?」

「女!彼女の他に」


息が…止まりそうになった。


分かってる。
私たちはただのセフレ。お互いを縛らないのが条件のもとで成り立ってる関係。愛なんて持ってはいけない。


「まじで?!あいつ彼女いるんだ!最低だね」

「あいつ何か言ってない?」

「何も。そういう話あんまりしないから」

「そっか」

これは事実。
私たちはお互いの恋愛の話はしない。彼氏・彼女がいようと体だけの二人には関係ないから。
『聞かない・干渉しない・愛を持たない』がルール。


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