陽炎-2
「あんた、また春人のとこ行ってたの?」
バイトから帰り、リビングでくつろいでいると姉の砂雪(サユキ)が呆れたように聞いてきた。
「まぁ…」
私はだるそうに答えた。
「やめなさいよ、いくら彼氏と別れて寂しいからって」
「別にそういうわけじゃ…」
姉は、私と春人の今の関係を知る唯一の人。
友達には軽蔑されるのが怖くて話せない。…というか話す必要がないと思っている。
姉の言う通り、私は春すぎに1年半付き合ってた彼氏と別れた。でも別に寂しかったから春人とこんな関係になったわけじゃない。
「早めに切らないと傷が残るからね」
姉はリビングのドアの前で立ち止まり、『今のは人生の先輩からの忠告!』と言い捨てて出ていった。
夏休みも半ばにさしかかっていた。二週間前から連絡はなし。気分転換に姉と買い物へ出かけた。
「砂雪はどうなの?」
「ん?」
「男」
「続いてるけど?」
「え!あの人?長くない?」
姉は昔から付き合ったら長く続く人だ。
妹の私は長続きしなくてよく男を変えていた。だから一年半も続いたのは奇跡に近かった……結局別れてしまったけど。
黒髪のストレートロングで清楚系美人な姉にひきかえ、メッシュ入りの茶髪で軽そうな私。姉みたいな人間に憧れるけど、到底なれっこない。
今だって春人とこんな関係になって…つくづく自分に呆れる。
〜♪〜〜♪
買い物を終え、そろそろ帰ろうかと話していたとき着信音が鳴った。
「………」
二週間ぶりの電話に、姉から少し離れ、一息ついて電話に出た。
「もしもし」
『俺〜』
画面の名前を見なくたって声で分かってしまう。
「何」
『今、暇?』
「まぁ…ね」
あぁ、くる。
そう思った。