女らしく【18】『彼岸と此岸と境界線』-1
「大和!大和!」
オレは台車に乗せられた大和の傍らでただ、大和の名を叫び続けた。
「大和ぉ!」
「マコト、離れて!」
大和を乗せた台車は勢いを落とすことなく、手術室へと入っていった。
「大和…」
全身から力が抜け落ちた…ペタンとその場に座り込む。
「マコト…しっかり…」
奏がオレの肩を抱き寄せた。オレは放心状態で何がなんだか、よく分からなかった…
「は、博士…や、大和はどうなるんだ…」
「…応急処置ははっきり言って気休めデス…
傷はかなり深ク、鬼の生命力とイエドモ…五分五分…イヤ、四分六分…」
改めて事の重大さを理解し、身体が震えた。
「マコトちゃん!大和は!?」
廊下を撫子さんが走ってきた。
「…い、今…手術室に…」
声が上手く出なかった。
「ご、ごめんなさい…オレ…オレのせいで…大和が…斬られて…血が…た、たくさん出ちゃって…オレが浮ついてたせいで…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…」
「落ち着いてマコトちゃん…貴女のせいじゃないから…」
「ワタクシ達にも責任がありますわ…最後は…皆、完全に油断してましたわ…」
奏に言われていたはずなのに…
最後は自分でも大丈夫だと思ってたのに…
「…うっ…大和…ごめ、んなさい…ひぐっ…っ…うわああぁぁああ…」
止めどなく流れ落ちる涙…
手術は翌朝過ぎまで掛かった。医者が言うには、一命は取り留めたけれど、最悪の場合、一生目覚めないままだと…
「ごめんなさい…大和」
病室に移された大和は口に呼吸器を付け、僅かに息をしている。
その息は弱々しく、すぐにでも止まってしまいそうだ…
オレは大和の手を握り続けた。
また日が昇った。
「おい…大和…何時まで寝てんだ…もう…昼だぞ…」
すでに試験終了から数えて二日が経った。
「…ほんとは起きてるんだろ…オレに意地悪してるんだろ…」
大和の顔は少し青くて、無表情のままだ…
「…意地悪しないでくれよ…起きてよ、大和…」
大和の顔に表情は浮かばない…