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女らしく
【コメディ 恋愛小説】

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女らしく【18】『彼岸と此岸と境界線』-4

「やま…と?」

握った大和の手が僅かに動いた。
気のせいかと思った。けれど、またピクリと大和の手が動いた。

気のせいなんかじゃない。

その動きは弱いものだった。

けど、オレにとっては大和が力強く握り返してきた様に思えた。

『今、行くから』

そんな大和の声が聞こえた様な気がした。

「大和…」

ツゥーと涙が零れた。オレの涙は涸れてはいなかった…

「大和…ごめんな…オレ…信じるから…待ってるから…っ…ぅっ…何年でも…っ…待ってるから…」

オレは、大和の手を自分の両手で包み込む様に握り、祈る様にして泣いた。



それから、三日後。
大和は長い、長い眠りから目覚めた。
またオレは泣いてしまい、喜びのあまり大和に抱き付いて、危うく傷口を開きそうになった。



「…大和」
「何だ?」

病院の中庭をリハビリを兼ねて大和と歩いた。

大和は順調に回復していき、多少、歩ける様になった。

「ううん…何でもない♪ただ呼んだだけ♪」

大和は微笑んだ。
こうして大和と話していると自然と心が暖かくなった。

「少し、休憩するか?」
「そうだな」

二人で中庭のベンチに腰掛けた。柔らかな陽射と穏やかな風が辺りを包んでいる。オレ達以外には誰もいない。

「…マコト、答えってまだ言ってなかったよな?」
「…うん」
「遅くなってごめんな…不安だったんだ…俺なんかがマコトを守ってやれるのかって…
彩美館じゃあんなこと言ったけど…俺なんかより、稲荷や他の奴の方がマコトにとっては幸せなんじゃないのかって思って…」

大和は続けた。

「最初は断ろうと思ってた…けど、断れなかった…マコトのことが好きだったから…」
「…えっ…」
「禍暁に斬られたあの時、身体が自然に動いた。その時、分かったんだ。出来るか、どうかじゃなくて、やるか、やらないかだって。俺はマコトを守りたいんだって」

大和がゆっくりと身体をこちらに向ける。つられてオレも大和と向き合った。


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