『Tragedy〜喪失〜』-1
―序曲―
「レミさん、カエデがもう少しで色付きそうですね」
私、風間礼美に向かって、リコ…坂本乃理子は、言った。
「そうだね。毎年キレイなんだよ、紅葉すると」
秋色に染まる風を感じながら、私たちはそっと寄り添う。
「紅葉したら、またこうやってレミさんと見たいなぁ」
「うん…」
私を見上げた仕草がとても可愛くて、思わず、リコを抱き締めて口付ける。
「レ、レミさんっ!電車乗り遅れちゃう!」
「ごめん。急ご?」
慌てて、二人で駅まで駆け出す。
小さなデータバンク処理の会社で、新入社員として入ってきたリコと、想いを確かめ合って一ヵ月。
それが、幸せだった私たちの、最後のシーンになった――