『甲賀地下蔵』-8
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(全ては、小父様のおかげ・・・・・・)
自分の中に庄左衛門の存在を感じながら、お江は髪を振り乱しつつ胸を大きく反らせた。
男の愛撫に自然と応えられるまでに躰を回復させてくれた庄左衛門の手厚い看護と傷を舐め合うような共同生活の記憶、そして感能の高まりによるすすり泣く姿を彼の前でさらけ出したこと等2ヶ月近くの出来事が次々と脳裏をよぎる。
(でも小父様と・・・・・このようなことになろうとは)
今自分を抱いている男は幼き頃から知る父の親友であり2ヶ月前に命を救ってくれた恩人。
そして間もなく自分と決死の逃避行を行おうとする一心同体の同志でもある。
真下から自らの乳房を包みゆっくりとした手つきで愛撫している庄左衛門の掌の感触、そして唇や舌ざわりすら今のお江に快感だけではなく安堵すらも与えてくれる。
そして自らの腰の動きと締付けの中でも硬さを増しながら蠢動する滾りの存在が、お江の襞を通して更なる高みへと彼女を導いていく。
(・・・・・このような心地、今までにない)
真田源二郎をはじめ様々な男達との交わりの時には感じられなかった不思議な感覚。
それが庄左衛門同様、お江にも自分が忍びであることすら忘れかけさせている。
(・・・・この上は、小父様共々必ずや甲賀を抜け出し、生きて小父様を上田へとお連れせねば・・・・・・・)
まさか庄左衛門自身がお江を逃がせても甲賀忍びとして自決しようと考えていることなど知る由もなく、
お江はこの瞬間だけ忍びではなく一人の女として庄左衛門との交わりに酔いしれていた。
そして感極まった庄左衛門が一声大きな呻きと共に腰を深々と突き上げ、えぐるようにしてお江の中を貫いた時、
お江は自分の中で弾けた庄左衛門の全てを身を震わせながら受け止めていた。
自らも辺りを憚らぬ悦びの叫びの余韻に浸りつつ脱力したお江は、その裸体を庄左衛門の胸板の上に預けていた。
この夜のことはお江の一生の内で格別忘れえぬものになる。
お江と庄左衛門達の甲賀脱出の刻はもう目前に迫っていた。
---------------- 完 ------------------