『甲賀地下蔵』-5
(あの世に行ったならば・・・・・市蔵殿に何と言われようか)
自らの滾りがお江の口の中に覆われ、その巧みな舌さばきと滑らかな口腔の感触に思わず腰を捻りながら、ふと庄左衛門は亡き親友の顔を脳裏に思い浮かべていた。
(よりによって貴様は何故娘と、とわしを張り倒すであろうか・・・・・それとも娘の命を救ったのだからと不承不承許してくれるであろうか。あるいはその両方か・・・・・・)
目を閉じたまま瞼の裏に親友の態度を想像し内心苦笑していた庄左衛門の物思いはここで途切れる。
場数を踏んできた忍びですら瞠目させるほどの快感の波が自身の下腹部に押し寄せてくる。庄左衛門は思わず目を開き首を動かし足元に目をやった。
庄左衛門の視線の先には自らも豊かな胸を押し付けるようにして地面にうつ伏せになり、剥き出しになった彼の屹立を口に含んだまま頭を上下させるお江の姿があった。
汗を含んだ黒髪の乱れと地面に押し付けられてもなお弾力を保つ白い乳房が、僅かな灯火の明るさの中でも庄左衛門の目には鮮やかに映った。
「・・・・・・お江殿」
庄左衛門の声にお江は一瞬動きを止め、頬に垂れ下がる黒髪をかき分けつつ庄左衛門の顔を見つめる。
庄左衛門自身を口に含んだままのお江の仕草が妙に蠱惑的で、それだけでも庄左衛門の昂りを煽るには十分だった。
「そなたの、その・・・・・心地よさではわしが」
たったそれだけの言葉でもお江には全てが察せられた。
嬉しそうに微笑みつつ、口を離してゆっくりと立ち上がる。
これまで半死半生だったお江をここに運び込んでからの全てを知る庄左衛門にとっては、こうしてお江がくの一として再び務めを果たせるほどに蘇りし姿を目にするだけで感無量であった。