『甲賀地下蔵』-2
既に庄左衛門の下腹部には血が流れ込み、彼の意思を代弁するかのように衣の下で熱を帯び上へ上へと反り返ろうとする。
最近は同じ甲賀のくの一とも関わることのなかった庄左衛門には久方ぶりのことだった。
昨晩感極まったお江と初めて唇を重ねた時と同様、今の庄左衛門の胸中は青年のような胸のときめきとお江と共に命をかけることへの歓喜で満たされていた。
そして彼の左手の中には豊かで張りのあるお江の乳房がある。
まさしく2ヶ月近く庄左衛門自ら濡れた手ぬぐいで丁寧に拭き、傷口の出血には幾度となく包帯を変えてきた肌の感触だった。
その時はお江の回復に只々専心していたこともあり、庄左衛門自身やましさや欲情を意識したことはなかったが、今この瞬間は違う。
それはお江への思慕や欲情だけではなく、自分の手で蘇らせた女体への忍らしからぬ思い入れであった。