妹、外患を取り去る-1
ひろやは両親に週末隣町のファミレスに行きたいといいだした、近所の人間がいないことがいいからだった。車に乗り走ること30分目的のファミレスに到着し、両親は何を食べようかと話していたが彼には食欲どころではなかったが、話をスムーズにするためにもメニューから何か適当に頼んだが、それすら記憶に残らなかった。
「お父さん、お母さん、今日は来てくれてありがとう。僕は本当に申し訳ないことをしたんだ。」
「何があったの?ひろや、何か困ったことでもあるの?」母親は心配そうに尋ねた。
「実は…」ひろやは言葉に詰まった。どうやって話せばいいのだろうか。両親は自分のことを信じてくれるだろうか。
「実は、僕は植木さやか先輩と付き合っていたんだ。」
「えっ?植木さやかって、あの生徒会長の…?」父親は驚いた様子で言った。
「そうだよ。でも、それだけじゃないんだ。僕はさやか先輩を妊娠させてしまったんだ。」
「なっ…!」両親は同時に声を上げた。周りの客から注目されるが、ひろやは気にせず続けた。
「それも、さやか先輩の妹と知らないまま手を付けてしまったからなんだ。」
「妹?どういうこと?」母親は呆然とした。
「さやか先輩には妹がいるんだけど、僕はその妹と偶然出会って、一目惚れしてしまったんだ。名前も聞かなかったし、顔も似てなかったから、さやか先輩の妹だとは思わなかったんだよ。」
「で、その妹とも関係を持ったのか?」父親は怒りを抑えながら言った。
「うん…そうなんだ。でも、それがバレて、さやか先輩と別れることになったんだ。その時にはすでにさやか先輩のお腹には子供ができていたんだよ。」
「そんな…」
「ひろや、お前は子供のことはどうするつもりだ?」父親は厳しく問いただした、医者には建前がある、命は生まれるべきだという建前が、だから彼の学生時代には学生結婚ですぐ子供を持ち、休学し復学する女子医大生もいたものだった。建前は時に本音よりも大事な時がある、将来苦労することがわかっていても、建前が必要なのだ。
「僕は…僕はさやか先輩のことが好きだよ。でも、妹のことも好きだよ。どちらも選べないよ。子供のことも責任を取りたいよ。でも、どうすればいいのかわからないよ…」ひろやは泣き出した。
「さやかさんはなんて言っているの?」
「もう会いたくはないってさ…………」別れを切り出されたということを、単純に解釈していたのだった。
「だが、子供は産まれてくる、ひろやは認めるのか?」