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ガリガル!!
【コメディ 恋愛小説】

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ガリガル2!!-1

私は、毎朝四人分のお弁当を作る。
家族の分?ううん、違う。お父さんのもお母さんのも、もう別に作ってある。この四つのお弁当箱は、私と、私の大事な友達と、私の…大好きな人の分…。


「おはよう、チィ!今日のご飯は何っ!?」
私が教室に入ると、一番最初に飛んでくるポニーテールの元気少女が、川田 朋己。通称モコ。
「今日は、唐揚げ弁当でーす!」
私は紙袋から黄色いお弁当箱を取出し、モコに手渡す。
「あたし、唐揚げ超好きぃ〜♪」
モコは、自ら持ってきているお弁当包みで大事そうに包むと、自分の席に一旦戻り、カバンにお弁当袋をしまってから、また私のもとに走ってきた。
「あれ?アリは?」
お弁当を受け取りニコニコしているモコに問う。
「今日まだ来てないんだよね。遅くない?」
モコは心配そうに、眉をしかめる。確かに、ショートホームルームが始まるまであと5分。いつもなら、今の時間帯には学校に来ているのに…。
「やっばいっ、遅れたぁっ!!」
ドタドタと廊下を走る音と共に、教室に飛び込んできたのが『アリ』こと、清水 有沙。長い栗色の髪を振り乱し、肩で息をして、扉の前に立ち尽くしている。
「おっ、おはよう、アリ。はい、お弁当」
私は恐る恐る、アリに既に包まれてあるお弁当を渡す。
「…あ、ありが…とう」
ゼーゼーと荒い息をしつつも、アリはモコ同様丁寧に、肩に掛けてあるカバンにしまった。
ここで丁度良く、チャイムが鳴って、担任の先生が教室に入って来た。私たちは急いで自分の席に座る。早く座らないと、遅刻扱いされてしまうからだ。
廊下側の後ろから二番目が私の席。
私はチラッと盗み見る。

やっぱりなぁ…。

思った通り、私の後ろには誰もいなかった。引いてもらえない椅子が、寂しげに机に納まっている。
耳を澄ますと遥か向こうから、パタパタパタパタと廊下とうちの学校指定のサンダルが擦れる音がした。それはどんどん近付いてくる。これは、まあ、言わば毎朝の恒例行事みたいなもので…。
先生は空いている机を確かめるため、窓際から順に目で追っていく。私と目が合い、逸らされた瞬間…。
「ギリギリっしょ!?」
そう言いながら、後ろの扉から教室に入ってきて、何事もなかったかのように私の後ろの席に座ろうとする男。名前は堤 響平。
先生は呆れたように「…遅刻」と呟いた。
「遅刻だって。俺、ギリ間に合ってたよな?」
座りながら、私に小さい声で話し掛ける。
「いーや。あれは、完璧な遅刻だった」
「えー…あれで遅刻なら、俺、遅刻しない自信がねぇよ…」
「もう少しだけ、早く来ればいいだけじゃん。はい、お弁当!」
私は、机に突っ伏している響平の前にお弁当を差し出す。響平はバッと勢い良く顔を上げると、満面の笑みでそれを受け取り「ありがとっ、いただきます!!」と顔を輝かせた。
私は毎朝、その笑顔を見れることが楽しみだった。胸の奥がフワリと軽くなり、仄かに温かくなる。響平の笑顔の基が、私のお弁当だということが何よりも嬉しい。心地よい高鳴りを体全部で感じると、私も自然と、響平に負けないくらいの笑顔になれた。


そういえば、私の名前を言ってなかった。
名前は阿笠 千百合、高校三年生。みんなからは『チィ』って呼ばれている。この愛称は小さい時からで、高校で出来た友達も自然とこう呼ぶようになっていた。余談だけど、見て分かる通り、私は響平が好き。だけど告白したり、彼女になろうなんて思わない。だって…無理だもん。私、全然女の子らしくないから…。


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