第二十九章 調教-3
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ステージを観ていた時の記憶が蘇る。
『ほら、オネダリしてごらん・・・
香奈子・・・・』
頭の奥で声が響く。
『苛めて下さいって・・・ほら・・・』
ムチを持った女の残像が脳裏に消える事なく焼きついていた。
鮮烈なショーは香奈子の心を捕らえ、マゾの本能を呼び覚ましたのだ。
膨れ上がった興奮に、死をも覚悟した固い決意はもろくも崩れ去ってしまった。
今、香奈子は禁断の果実を自らの意思で手にしようとしている。
『あなたが望まない限り、
僕は決して手を出しませんよ・・・』
男は約束通りに、自分からは何もしようとしなかった。
少なくとも香奈子はそう感じていた。
『あふぅ・・んん・・・ああ・・・
い、いい・・・』
ショーを観ながらされた愛撫も拒む事無く、むしろ催促するように甘い声を男に投げかけていたのだ。
『苛めて欲しかったら、
自分からお願いするんだよ・・・』
『は・・・い・・・』
ステージで女を調教する声はまるで自分に命じているようで、香奈子は素直に返事をしていた。
『ねぇ、お願い・・・
ああ・・・ね、ねぇ・・・』
愛撫する太い腕にしがみつくように声を絞り出す香奈子の願いを、竹内は満足そうな顔で聞いていた。
『本当にいいんだな、香奈子?』
念を押す言葉に、コクリと頷いた。
『じゃあ、行こうか・・・』
男は抱きかかえるように香奈子を立ち上がらせると、ステージに視線が釘付けになっているギャラリーの群れを抜けて会場の奥へと連れて行った。