第二十八章 思い出づくり(画像付)-11
『さあ、お名前からお伺いしましょうか?』
『い、いやっ・・・』
差し出されるマイクに女は答える事も出来ず、首を振った。
『あうっ・・・』
ムチがとんだ。
『何、上品ぶってるんだよぉっ・・・』
黒尽くめの女が大きな声で叫んだ。
『お前が望んだから、ここにいるんだろうがぁ』
可愛い顔立ちからは想像も出来ない程の荒々しい迫力に、場内がシーンと静まり返った。
『うっ・・・ううぅ・・・』
すすり泣く女の声だけが、微かに聞こえてくる。
『おやおや・・・』
シルクハットの男が、わざとおどける様に言った。
『乱暴はいけませんねぇ・・・』
優しい口調が緊張を和らげる。
『怖がっているじゃ、ありませんか・・・
ねぇ・・・?』
会場にいる女性客だろうか、クスリと笑い声が聞こえた。
『でも、ご安心下さい・・・』
タイミング良く、男が答えている。
『彼女は真性のマゾですので、
いたぶられるのが、本当は大好きなんですよ』
場内がドッと沸いた。
ざわめきがおさまるのを待って、男が再びマイクを女の顔に近づけた。
『気持ちが落ち着いた所でどうですか、
お名前を聞かせてくれませんか?』
もはや、女に拒否する気力は残ってはいなかった。