one-sided love*a memory*-1
「うわぁっ…これ、アタシ?!」
母親が出してきた、小さい頃のアルバム。
ハユルが指差した先には、まだ生まれて間もない赤ん坊がこっちを見ている。
「ちっちゃあい!きゃー…んんっ?」
歓喜の声を上げ、隣りのページを見ると、小さい子供が2人…
可愛らしい女の子の方はピースサインを、銀色の髪をした男の子の方は口の端を上げている。
しかし、女の子はハユルではない。天然の栗色、すごい綺麗な、くせっ毛のウェーブ。
「うわぁ…かわい…。」
「何…?写真…?」
声がして気付くと、隣りには成長した銀髪。
見入ってしまっていたようで、チユルが入って来た事に気付かなかった。
お風呂上がりなのか、綺麗な銀髪が、いつもの無造作ヘアーではなく、幾分パサついている。
早速、写真を見せる。
「うんっ!あ、ねぇ、コレって兄やんだよね?!」
場所は動物園なのか、バックには、ペンギンの群れ。
「…どれ…?…………あ。」
写真を見た瞬間…いつもの優しげな顔は何処へやら、見る見る哀しげな…今にも泣きそうな顔へと変わっていった。
「えっ?!ちょっ…兄やん…?どうしたの?」
焦るハユル。ものすごい素直すぎる為、喜怒哀楽がすぐ顔に出てしまう兄を見つめる。
「…ううん…何でも、ないよ…。」
そう言って、チユルはハユルの頭をそっ…と撫でた。いつものような、くしゃくしゃとするのではなく、あくまで優しく…。
(何か、辛い思い出でもあるのかな…?聞いちゃ…ダメだよね…。)
膨れ上がる好奇心を押さえ、ハユルは耐える。
しかし……
「あらー!この子、春柚ちゃんじゃない?」
…やっぱり、空気を読めない人間は、何処の世界にもいるもので。
横にいる母親(居たの?)も、至って例外では無いわけで。
一気に、チユルの周りのオーラが重くなった。
「ちょっと!今兄やんが…。」
「えー?何よぉ?あ、そうそう…この子、引っ越しちゃったのよねぇ…。」
お構いなしに話し続ける母親。
「美人サンだったのに…」
捕まえとけばよかった、と小さな悪魔の囁きが聞こえたのは、ハユルだけだろうか?