one-sided love*a memory*-4
もう心配で…春揺の事なんて…頭にないくらいで……。
玄関の前まで来て、そしたら―――………
「チユ。」
父さんが、名前を呼んだんだ。
「んぅ…?」
病院近いし、面会時間終わってからの帰宅だったから…歩いてる途中…寝ちゃってさ…。
背中におぶさってたんだ…俺…。
そしたら、父さんが…ギュって手を握って、俺を起こして…
「春揺ちゃんが、お前にって…。」
何かを渡した…。赤い袋に入った、小さな小さな白い箱と、白い便箋。
箱の中身は…、俺の大好きなクッキー。
そして……
『チーくんへ』
その日…一緒にクッキー作る約束してたんだって……。
でも…約束守れなかった…。
……―――次の日から…春揺は来なくなったんだ…。
外国に、移住したんだってさ…。
クッキー作るのも、春揺の親から言い出した事で…今となって考えてみれば…『思い出作り』みたいな…。
すごい…哀しかった…ずっと泣いてたし…。
そこまで話して、チユルは言葉を止めた。そして……
でも、暫くして…違う子が、俺の側に来たんだ…。
涙目になっているハユルを見つめる。
「誰なのっ?もしかして、違う女の子?」
結構…鈍いんだな…。
「ん…違う…それは…内緒…。」
くっくっく…チユルは笑った。
「なんでよぉ!」
プゥッと、頬を膨らますハユル。
その姿を見て、チユルは思い出していた。
春揺を。
その姿を、重ねていた。