one-sided love*a memory*-2
「ハユ…聞きたい…?」
今までずっと黙っていたチユルが、重たい口を開く。
「…?そりゃ、聞きたいけど…兄やんが話したくないなら…。」
そう言うと、
「いや…別に、だいじょぶ…。」
意外とポジティブ、笹川チユル。
「じゃあ…聞く!」
目を爛々と輝かせて答えるハユルにチユルは、うん、と頷き…
話し始めた。ハユルの知らない、チユルの過去を。
「…あれは…俺、3歳の…時かな…。」
―――――…………
ミーンミンミンミン…ミーンミンミンミンミン………
「チー!遊ぼーう!!」
暑い暑い夏の日、笹川家の前に、一人の小さな小さな女の子が立っていた。
ガチャ…
暫くして玄関の扉が開き、ピンクのタンクトップを着た、これもまた小さな小さな男の子が眠たそーに出てきた。
「どうしたの…?チユ、まだ眠い…。」
バサッ…
「虫サン、捕まえに行くよぉ!!」
新品の虫捕り網で捕らえられた少年は、
「やっ、やだっ!虫嫌い!!」
必死に網から逃れようと、一生懸命払う。しかし…
「うっ…うわぁぁぁぁぁん!!!」
……絡まり、顔が出せなくなった少年の悲痛な泣き声が、早朝6時の住宅街に響き渡った……。
「ごめんなさいね、チユルちゃん…。」
笹川家リビングにて。
泣きはらし、目を真っ赤にしたその子に、その人は言った。
栗色の長い髪、日本人離れした顔立ち、透き通るような肌、細過ぎない綺麗な体…。
『女』と言う言葉が、その人の為だけにあるような…。聖母マリア…そんな、美しい女性。
その隣りには、その美しい女性をそっくりそのまま写したような小さな女の子が、ジュースを飲んでいる。
ごくっ、ごくっ…綺麗に飲み干すと、口を拭い、女の子は言った。
「チー、大丈夫ぅ…?」
「……。」
返答なし。